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サスペンス

悪魔の手毬歌/あらすじ&感想/さすが市川崑作品。

1977年 市川昆監督。今見てもほんとうに面白い。原作の世界観そのままに、ちゃんと2時間ぐらいであの複雑な人間関係と殺人の動機をわかりやすく解き明かしている秀逸な脚本と、市川崑ならではの斬新でスタイリッシュなカット割り。

すごく古い映画なので、画面は色あせていますが、作品は色褪せません。
悪魔の手毬唄




あらすじ

探偵の金田一耕助は、静養のため岡山県の鬼首村にやってきた。宿泊している旅館の女主人の青池リカは、過去に夫を殺害された過去がある。

犯人の詐欺師・恩田幾三は今も行方不明のままであり、金田一の旧友の磯川警部はまだこの事件のことを忘れていなかった。

リカの息子の歌名雄は旧家である由良家の娘泰子と交際していたが、村の出身で人気歌手の大空ゆかりが里帰りした日の翌朝、泰子は死体で見つかった。口に漏斗を差し込まれた奇妙な姿で。

さらに泰子の通夜の晩、今度は別の旧家の仁礼家の娘がいなくなり、死体で見つかる。周囲には天秤と小判がばらまかれていた。

小さな村での事件に大騒ぎとなる中、泰子の祖母が「昔から伝わる手毬歌を聴いてほしい」と言い出す。金田一耕助は歌の歌詞を聞き、驚愕の事実に気がつくのだった。

感想

感心するのは、岡山県の山奥の村とされるロケ地の風景が、ほんとうに深く寂しい山々で、物語の悲しさを象徴しているところです。

もうこんな森は日本に無いのかもしれないと思います。なぜなら今は少し気候が違っていて、湿度や温度の違いが、日本の森の木の色さえも変えてしまっているからです。

金田一耕助は石坂浩二が演じています。「こんなにうまい俳優さんだったのか」と驚かされました。

市川作品としては「犬神家の一族」「獄門島」からの「悪魔の手毬歌」ですが、これはもう集大成と言える、熟成された作品になっています。

物語の流れに淀みがありません。殺人事件が連続で起きますが、怖すぎることもなく、笑うシーンもちゃんとあり、若山富三郎、草笛光子、その他豪華なキャストの演技も素晴らしいです。もちろん岸恵子さんも、ほんとうに美しいし存在感ある。

横溝作品の映画は、「横溝」という日本映画のひとつのジャンルであるという気さえしてきます。これは絶やさないでほしいです。


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