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サスペンス

『ディア・ドクター』映画のあらすじ&感想

2009年 西川美和監督。いい作品を観たなあという感想が残る作品。一面の緑の田んぼを走るバイクの画がせつない。

あらすじ

かつては医師が一人もいなかった過疎の村。伊野(笑福亭鶴瓶)はこの村で唯一の医師として村人たちに慕われていた。

どんな病気でも治してしまう伊野は、村の老人たちに尊敬される存在だった。

しかしあるとき伊野はた突然疾走する。警察が訪れ捜査していくうちに伊野のある秘密があきらかになる。伊野はなぜ突然姿を消したのか・・。

感想

様々な映画賞を受賞したこの作品。また笑福亭鶴瓶が俳優としての才能を開花させた作品でもあります。

また田園風景の描き方がきれいだな、と思います。それから音楽が使われ過ぎないところ、回想法でさかのぼっていくところ、まるでヨーロッパの映画のようです。

クライマックスでバイクに乗った伊野が村人のかづ子さん(八千草薫)に気付き止まります。そして白衣を脱ぐ伊野。遠くから見つめるかづ子さんの瞳。

このシーンはとても美しく、田んぼの緑色がずっと心に残りました。

伊野の秘密は最初に明かされるのですが、伊野がどういう人物でどんな心理だったのかが、丁寧に肉付けされていく展開に、一種の心理サスペンスを観ているような気がしました。

少しだけ残念だったのは、伊野の心理状態はある程度までしか明かされず、もどかしさが残る部分も。

それも、かづ子さんに関わるだいじなところで、「どうだったのかな」と思ったまま終わったので、そうなると鶴瓶の演技がまるで何か足りなかったのかという印象になっちゃった気がします。