2017年 ギレルモ・デル・トロ監督 アカデミー作品賞・監督賞など4部門を受賞しました。「水」が物語の案内人のように使われています。それと映画全体を彩る緑系の色調とそれに映えるイライザの赤い服が効果的でした。
あらすじ
ソ連とアメリカが冷戦真っただ中の時代、イライザは言葉を話すことができないが、1人で暮らし、毎日機密機関の航空宇宙デンターの清掃員として働いている。
隣に住むゲイの男性や、気の合う仕事の仲間とともに、平穏な毎日を送っていた。
あるときセンターに水の入ったタンクが運び込まれ、物々しい雰囲気に包まれる。偶然その部屋を掃除していたイライザは、水の中に人間のような形の生物を目にする。
それは半魚人のような「生物」だった。
軍から派遣された上官のストリックランドは、生物に対して暴力的に接し、毎日拷問するようになる。
しかしイライザはなぜか生物にシンパシーを感じ、やがて心を通わせるようになった。人間のように知性を持ったその生物はやがてジェスチャーをおぼえ、好物の玉子をイライザといっしょに食べるように。イライザは生物に対して恋心を抱くようになるのだった。
しかしアメリカ軍はソ連を出し抜くために、生物の生体解剖を決定する。そのことを知ったイライザはなんとか助けようと考えた・・。
感想
美しい夜の街の風景が映し出され、ほんわかした始まりだったのですが、まさかああいう結末を迎えるとは。
いろんな映画祭で賞を受賞し、絶賛された作品。でも私はちょっと惜しいなと思います。それはなぜあれほど血を見なくてはならなかったかということ。
1962年の街並みと生活感の描き方はとても素晴らしく、音楽がまたとても良く、主人公イライザの雰囲気にマッチしてワクワクする始まりでした。
そしてどす黒い男たちによって生物をめぐる陰謀が渦巻き始める・・。この温と冷のバランスが途中までは抜群に良かったので、さあクライマックスからラストはどのように、と期待と怖さでドキドキしていました。
そしてそのラスト15分。うーん、いいんだけど、いいんだけど、こうなっちゃうか。という感想に。
もうすこし練られなかったでしょうか脚本を。なんだか安易では、と思ってしまいます。それと、伏線の回収が不十分な気がしますし・・
それでも、あの一瞬に救われました。
ふわっと開いたとき。
何だろうと思われた方、本編でご確認ください。
実は公開当時「クリーチャーと恋に落ちるなんて」と思って敬遠してしまっていましたが、それについては大いに後悔しています。
細かいところまで凝った作りで、上質な作品であることは間違いありません。クライマックスをどう見るかは、人それぞれです。