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燃ゆる女の肖像/映画のあらすじ&感想

2020年。セリーヌ・シアマ監督。18世紀のフランスを舞台に、女性同士の禁断の恋が描かれます。決してどろどろした恋愛映画ではなく、規律正しく生きている女性たちの内に秘めた感情を、乾いた描写で描いています。それにしても時代背景の再現が素晴らしい。そして何もかもが美しい。




あらすじ

18世紀のフランス。生徒に絵を教えていたマリアンヌ(ノエミ・メルラン)は、偶然生徒が見つけた古い絵のことを聞かれる。マリアンヌはその絵の題名を「燃ゆる女の肖像」と答えた。

そうしてマリアンヌの脳裏にはあの日のことが蘇ってきた。

ブルターニュに近い孤島を訪れたマリアンヌは、エロイーズ(アデル・エネル)という結婚を控えた女性の肖像画を描くことを依頼されていた。

肖像画を描かれることを好ましく思っていないエロイーズに隠し、マリアンヌは彼女との散歩を毎日楽しみながら、こっそり絵を描いた。

2人は少しずつ距離を縮めていき、次第に友情を超えた感情が芽生えてくる。

そんなある日マリアンヌは出来上がった絵を見せ、自分が画家であることを告白した。

するとエロイーズは絵が自分の本質を捉えていないと批判し、マリアンヌははっとして絵を塗りつぶし、もういちど描きなおしたいと申し出るのだった・・。

感想

最初に、床に響くマリアンヌの靴音でこの屋敷がとても大きな屋敷であることがわかります。応接間だった部屋の暖炉で、濡れた服とキャンバスを乾かす彼女の姿は一枚の絵のようです。

音楽が少ない、それだけで魅力を感じてしまう映画があります。この作品も実に効果的に音楽が無い。海風の音、波の音、料理をする音、絵筆の音、靴音、ごわついたドレス衣擦れの音。

これらによって、その後の焚火のシーンで奏でられるアカペラの曲がすばらしく生きてきます。この曲はまさに圧巻でした。

何をあらわしたいのかをシンプルに追求した脚本と映像は、観る人を心地よくしてくれるのだと気づきました。情報量が多すぎる社会に生きている私たちに、この映画は静かな時間をくれたのかもしれません。

ただし、エロイーズ役のアデル・エネルは大変美しい人ですが、年齢的に厳しいかもと思います。修道院から帰ってきた処女の役をするには大人すぎるかな、と。

そんなエロイーズの最初の登場シーン、強い風の吹く海岸で振り返りくっきりした瞳が鮮烈に焼き付けられます。このシーンは実に美しいシーンでした。

さらにラストシーンはエロイーズが秘めた感情を抑えきれず涙するアップで終わります。

いずれのシーンも、アデル・エネルの元のパートナーだったセリーヌ・シアマ監督の、彼女への尽きない想いがこもっているようだな、と感じました。