2020年 島本理生の小説「red」の映画化。衝撃的内容と言いますが、世の中にはありがちなこと。原作とは違うラストは、この物語を本質的に違うものにしてしまったかもしれません。
ただそのまえに、この映画のリズム感が良くないことで、物語そのものがあまり頭に入ってきませんでした。
あらすじ
誰もがうらやむ夫とかわいい娘を持ち、恵まれた日々を送っているはずの村主塔子だったが、どこか行き場のない思いも抱えていた。
そんなある日、塔子は10年ぶりにかつて愛した男・鞍田秋彦と再会。塔子の気持ちを少しずつほどいていく鞍田だったが、彼にはある秘密があった。映画.com
感想
回想シーンが交互に綴られます。とても美しい雪道の回想シーンと、塔子たちがどのようにして雪道を走るに至ったかという本筋と。
ただしこの映画は回想シーンの挿入に失敗しています。回想シーンは、どれだけ頻繁に入っても、「わからなくなる」ことがあってはいけません。
作り手はこの雪道シーンの出来栄えにこだわっているようにみえ、確かにとても美しいとは思います。もっと言えば、すべての場面が丁寧に撮られていて、車の窓ガラスに映る光の動きとか、また俳優さんたちの表情もいろんな場面でとてもきれいです。
ただ、間が良くない。リズム感が良くないので、じっと見ていると気持ち悪くなるのです。どこか間延びしているというか。
だから回想シーンも効果的どころか、何のことかわからなくなってしまうのです。
夏帆があんなにがんばって「いい表情」をしていたのに。ほかの俳優さんたちもとてもいい演技をしていたのに。濡れ場もかなりがんばったのに。
映画というのはいかにバランスよくつなぎ合わせるかという芸術なのだな、と改めて実感しました。
ただ、それでも嫌いな作品ではありません。主人公・塔子の選択は、自分自身に素直であるだけです。それによって周りがどうなるのか、また自分がどれだけ傷だらけになるのか、わかっていながらそれを選択した。
このストーリーは女性にとっては本当に身に染みるような哀しいものでした。だから、決して嫌いにはなれないです。