1986年 ウディ・アレン監督の名作として上位に出てくるこの作品。86年当時、時代の最先端だったと思われるライフスタイルも監督のセンスを感じさせます。トレンディドラマ風ですが、普通の人々の本質を描いていて楽しい。楽しいながら複雑な気持ちで終わり、いつまでも心に残ります。
あらすじ
姉妹の長女ハンナ(ミア・ファロー)は舞台女優で、夫エリオット(マイケル・ケイン)とマンハッタンで平穏な毎日を送っている。
エリオットは家庭的なハンナに満足しながらも三女リーに惹かれ、彼女と一線を越えてしまう。リーは画家のフレデリックと同棲中だが、エリオットの強引なアタックに揺れ動く。
一方、売れない女優の次女ホリーは仕事も恋愛も中途半端で、ハンナに心配ばかりかけている。そんなある日、ハンナの家に元夫ミッキー(ウディ・アレン)が訪ねてきて……。映画com.
感想
ウディ・アレンがどのように名監督であったかなど、今は忘れ去られていることでしょう。その後のスキャンダルのせいで彼の名声はすっかり地に落ちています。
しかし改めて観てみると、ウディ・アレンの映画はやっぱりいいです。
人というものの可笑しさを皮肉るでもなくサラリと饒舌に語り、さすがだと思わせてくれます。
「ハンナとその姉妹」ではウディがアカデミー脚本賞を受賞しています。ニューヨークが舞台のトレンディドラマのような軽い語り口でも、1人1人の人間らしさがしつこいほど伝わります。
しつこいと言えば、セリフの多さも、独り語りの多さもしつこい。だけどまったく飽きずにストーリーに引き込まれる。これは場面の切り替わりがサクッとしているためなのか、絶妙なテクニックだと思いました。
ハンナを演じた大女優のミア・ファローは長くウディ・アレンとパートナーでした。この映画では元夫婦の設定ですが、2人の共演シーンが一番しっくりきます。いい妻だけど真面目すぎる人をうまく演じています。
またダイアン・ウィースト、バーバラ・ハーシー、そしてマイケル・ケインやマックス・フォン・シドーの演技も、古い言い方ですが天下一品です。
最も真実味があるなと感じたのは、マイケル・ケインが熱病のように恋したかと思いきや、やがて覚めて行く過程。大人の恋はこんなものだな、とケインの演技とともに感心しました。
どんなスキャンダルも作品とは無関係・・とは言えど、やはりちょっと引いてしまうのは仕方ないこと。
そんな引いた眼で観つつも、それでもこの映画のおもしろさは色褪せてはいません。
作品に罪はないと思いつつも、人々の作品への見方が変わってしまったのはやはり残念なことだと思いました。