2022年 ルカ・グァダニーノ監督が「君の名前で僕を呼んで」に続きティモシー・シャラメと組んだ作品。圧倒的な瞳の美しさに(たとえ人食いであっても)すべては許されるのでしょう。「WAVES/ウェイブス」のテイラー・ラッセルの悩める演技も好感が持てます。
あらすじ
人を食べてしまう衝動を抑えられない18歳の少女マレン(テイラー・ラッセル)は、同じ秘密を抱える青年リー(ティモシー・シャラメ)と出会う。
自らの存在を無条件で受け入れてくれる相手を初めて見つけた2人は次第にひかれ合うが、同族は絶対に食べないと語る謎の男サリー(マーク・ライランス)の出現をきっかけに、危険な逃避行へと身を投じていく。映画com.
感想
人と違うことによって、この世界が生きづらいと感じる。多かれ少なかれ人はそういう部分を持っています。
誰かと同じであることが、人間世界のコミュニティの中では、個性よりも先にまず尊重されるものだからです。
「人を食べる種族」なるものがこの世に存在するかは別として、もしもそんな人がいたとしたら、そりゃ生きづらいことでしょう。悩むことでしょう。
もしくは、開き直って悪人となり食べまくるかです。
しかしこの映画では、主人公のマレンは父親に「普通の人間」になるように監視され矯正されて育ちます。そのため矯正をあきらめて父親が去ったあと、ようやく自分が人食いであることを自覚し、懊悩します。
そんなマレンが出会う同族たち。彼らはすべて違う哲学を持っていました。人を食うということの哲学を。真っ当なことを言うが嘘くさいサリーや骨まで食べる意味を説く男。
そうしてマレンは、普通の人間のように生きることを選びました。同じ人食いで、そして心に深い傷を持つリーとともに。
どう考えても永遠に続きそうにない幸せな日々。しかしそれは人が生きづらさの中から這い上がり、生きていく道を朧げではあるが見つけ出した瞬間でした。
誰かと手を取り合うことで叶わない夢も叶うかもしれないと信じられる。だけど、ほんとうにどう考えても幸せな未来は無いとわかるのに・・マレンたちを応援してしまう心理になる。
タイトルの「Bones and All」とは「骨までもすべて」ということ。このタイトルの意味が、驚愕のラストで大きな意味を持つのですが。
でもそれがわかったからと言って、それでもどうなんだ?と、映画が終わってもその後数日自問自答が続きます。どうなんだ?どうなんだ?と思い続けるこの映画。
観たあとの気持ちが「君の名前で僕を呼んで」によく似ているのに気づきました。