2009年 監督のミヒャエル・ハネケはさまざまな問題を世に投げかけるような作品を作り出してきました。「ピアニスト」では画面を直視できないほどに何かを突き付けられたような気がしましたが、この作品も実は世界中の人々に鋭いメッセージを送っているように思えました。
あらすじ
第1次世界大戦直前の北ドイツを舞台に、教会や学校の指導でプロテスタントの教えを守って暮らしてきた小さな村の住人たちが、次々と起こる不可解な事故によって不穏な空気に包まれていく様子をモノクロ映像で描きだす。映画com.
感想
最初の事件は、村の医者が何者かによって張られた針金で落馬し大けがを負ったことだった。それから次々と起こる不穏な事故や事件。一体犯人は誰なのか・・
だがしかしこの映画は、犯人捜しのミステリーなどではなかったのです。最後まで犯人は明確にされないままですが、前後の状況から想像はできます。
それよりも「なぜそれが行われたか」「なぜそういう気持ちになったのか」を考えると、とてつもなく恐ろしくなってしまう。
この村はドイツにあり、時代は第1次大戦前夜。人々はみな敬虔なクリスチャン。このシチュエーションですぐに浮かぶことは、村の子供たちの年齢は将来のナチスドイツを担うであろう年頃だということ。それこそがこの村の空気、映画全体の不穏な雰囲気の理由なのです。
村の牧師は時間に遅れた自分の子供たちに「無垢であれ」という戒めのために腕に白いリボンをつけるように命じました。それはユダヤ人に強要したダビデの星を思い起こさせます。まさにそれがこの映画の根本。無垢がゆえに増幅された悪。
その部分の秀逸さで映画は世界的に評価されました。しかし私はもうすこし説明がほしいと思いました。やはり物語ですので、流れに沿って理解がしやすいヒントがあっても空気感を変えるようなことはなかっただろうにな、と思います。
語り手をせっかく「村人ではなく、よそから来た教師」にしたのだから、そして彼は真相をうすうすしか知らないのだから、知らず語りでもう少し説明があったほうが親切でしたね。