2022年 監督:ケネス・ブラナー 映画・演劇界における世界的な重鎮であるケネス・ブラナーの自伝的作品。
あらすじ
ベルファストで生まれ育った9歳の少年バディは、家族と友達に囲まれ、映画や音楽を楽しみ、充実した毎日を過ごしていた。笑顔と愛に包まれた日常はバディにとって完璧な世界だった。
しかし、1969年8月15日、プロテスタントの武装集団がカトリック住民への攻撃を始め、穏やかだったバディの世界は突如として悪夢へと変わってしまう。
住民すべてが顔なじみで、ひとつの家族のようだったベルファストは、この日を境に分断され、暴力と隣り合わせの日々の中で、バディと家族たちも故郷を離れるか否かの決断を迫られる。映画com.
感想
モノクロは効果的だったのか
モノクロの映画というと、まず「ローマ/ROMA(アルフォンソ・キュアロン監督)」を思い出します。
どうしても比べてしまうことになりますが、同じモノクロの映像でも、奥行き、美しさの点でずいぶん見劣りします。
冒頭の暴動シーンは、いきなりの掴み映像のはずですが、白黒になっていることで場面の平面なのが際立ってしまい、せっかく車まで燃やしたのに迫力がそがれる格好になりました。
それは後半のクライマックスでも同じことです。凝った画像を作りたかったのでしょうが、少し残念です。
ベルファストへの思い
ただ、ベルファストという街へのケネス・ブラナーの思い入れは強く感じられ、この港湾都市にどれだけの懐かしさを感じているかは十分に汲み取れます。
さらに北アイルランド問題という歴史上の悲しい出来事が下敷きにあるので、映像が平坦でも主人公たちの思いはステレオで伝わってくるという利点はありました。
ラストシーンがあっけない
ここで大事になってくるのは、ラストシーンです。
ジュディ・デンチという演技派大女優を起用しているのに、最後があっけない。
家族とともにベルファストを去るためにバスに乗り込む・・あそこは、物語を締めくくるセリフを、主人公に投げかけなければならない。そうでなければ、私たちも物語を終われないのです。
終わり良ければ総て良し。この大切な機会を逃した監督はケネス・ブラナー。とても残念です。