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『ココ・アヴァン・シャネル』映画のあらすじと感想

2009年 オドレイ・トトゥ主演。アメリの時よりもずいぶん大人になりました。女性の服はどうあれば美しいかを自由な心で見抜いたココ・シャネル。そのデザイナーとしての資質が花開く前日譚です。

あらすじ

孤児院で育ったココ(オドレイ・トトゥ)は、施設を出てからナイトクラブの歌手やお針子として働いていた。

貴族のバルザンに見初められ、愛人として何不自由ない生活を手に入れるが、ココはもっと自分らしく生きたいと思っていた。女らしいドレスを着るのにも抵抗があった。

あるとき自分のことをそのまま受け入れてくれるアーサーと出会い恋に落ちたココ。さらに自らのファッションも作り上げていく・・

感想

世界の女性の服の在りかたを変えた、と言っていいほどのデザイナーであるココ・シャネル。コルセットや、でかすぎる帽子、たっぷりとフリルが施されたドレス。ザ貴族と言っていいようなキラキラの装飾品など、女性が飾り物であり、苦痛な服装でいなければならなかった時代を、その斬新な発想で変えていったのは、ココ・シャネルその人であると言っても過言ではありません。

この物語は、その彼女のほんとうに波乱の人生の、ほんのさわりの部分と言えるでしょう。しかし本当の愛にめぐりあい、傷つき、そして自分がしたい恰好をした。このことがその後のココの生き方やデザインに大きく影響するのです。

私自身も若い頃は服飾系の学校だったので、シャネルの服の素晴らしさについては基本中の基本として知っていました。有名なシャネル・スーツはベーシックで着こなしやすく、どんな体形でも美しく見せてくれます。

さてそのココ・シャネル。数奇過ぎる運命が知られています。英国貴族など何人もの男性とのおつきあいや、ナチスのスパイだったという疑いも。

これらをすべて描いていたら、何十時間もの作品になってしまいそうです。だからその序の口だけを詳しく描いたのでしょうが、私はもう少しデザインについて踏み込んでほしかった。

劇中でココが周りとは全く違う、シンプルな服装をして揶揄されるシーンが何度もありますが、いまその恰好は普通に通用するようなすてきな装い。

彼女がなぜそのスタイルを思いついたか、どこが魅力だと感じていたのか。彼女がデザインしたシンプルな帽子はなぜあんなにも人気を博したのか。デザイナーを描いた映画ならそこは無言で通り過ぎないで、ちゃんと掘り下げてほしかったです。

もっと言えば、なぜお金持ちの愛人の生活をするようになったかの説明が、偶然しかたなくというように流れて行っているのがもどかしい。もっともっと女のしたたかさを前面に出しても、観ている女性たちは怒りません。だってこの時代それしかないじゃないですか。貧しい女が邸宅で暮らす方法は。第一、現代だって一般的な女性たちは高収入の男を選びますし。

そういうわけで、要するに映画はそれほど良かったと言えるものではないのですが、ココ・シャネルというひとの、いろんなことを知りたくなったのは確かです。