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『パターソン』映画のあらすじ&感想

2016年 ジャム・ジャームッシュ監督。アダム・ドライバー主演。ごく普通のバスの運転手の一週間の日常を描いた物語。

あらすじ

パターソン(アダム・ドライバー)は名前と同じ街・パターソンに妻ローラ(ゴルシフテ・ファラハニ)と暮らしている。

妻を起こさないように淹れたてのコーヒーを飲んでから出勤し、バスを運転して街を回る毎日。帰宅すると、明るい妻に迎えられ、楽しく話をして夕食を取った後、犬の散歩がてら行きつけのバーに向かう。そして翌朝また同じようにバス会社に出勤する・・。

そんな彼の趣味は仕事の合間に詩を書くこと。パターソンの静かな日常は、彼が書き留めた何気ない詩のように、何にも代えがたい宝石のような日々だった。

感想

本当に静かに毎日は過ぎていき、それでもそれなりに事件はちゃんと起きていて。斬新な趣味の自由なローラがこれまた斬新なカップケーキを売り、完売したこと。パターソンのバスが故障して立ち往生したこと。行きつけのバーでカップルの痴話げんかに巻き込まれたこと。

だけどよく観ていると、あることに気付くのです。パターソンとローラは愛し合っていて今は幸せだが、何か過去に背負っているのではないかということ。

部屋に置かれたパターソンの昔の写真。軍服を着てたくさんの勲章を付けている。そのことには言及しないけれど。

そしてローラを演じるゴルシフテ・ファラハニはイラン人の女優さん。今は自由を謳歌しているが、過去はそうではなかったかもしれない雰囲気を醸し出しています。

そのあたりの小さな情報を出しながら、何もない日々こそが何よりも素晴らしいのだと私たちに説いているかのようなジャム・ジャームッシュ監督。

この他にも別の作品へのオマージュや、ちょっとした仕掛けが隠されているのだけどきっとそのことまでは誰も気づかず、しかも別に気づかなくてもいいよ、と監督が言っているかのよう。

永瀬正敏が詩人の役で登場しますが、「東洋の不思議な人物がなぜかここにいる」的で、完全にはしっくりこなかったけど、それでもこのクライマックスで登場したタイミングはとてもよく、しかも永瀬の演技はさすがです。

後になって、心に何かがずっと残っている・・。これはそんな映画だと思いました。