2001年 フランス映画 ミヒャエル・ハネケ監督。この映画は何と表現したらいいのでしょう。簡単に批評なんかしてもいいかな、と思ってしまうような作品でした。
あらすじ
エリカ(イザベル・ユペール)はウイーンの名門音楽院でピアノの教師をしている39歳の独身女性。これまでピアノ一筋に生きてきた。
過干渉な母親に管理され、帰宅時刻が遅くなっただけで異常に叱責される日々。これまで男性と交際したことも無かったエリカは倒錯した性の趣味を持つようになっていた。
あるとき若い学生のワルターに一目ぼれされ、愛の告白を受ける。内心とても戸惑いながら、彼を冷たく拒絶するエリカだったが、あることがきっかけでワルターの愛を受け入れかける。
しかしエリカの歪んだ性趣味によって2人の関係も次第に歪んだものになってくる・・。
感想
エリカを演じたイザベル・ユベールの演技力は、まさに凄味があります。39歳のとても美しい独身の処女。
しかも音楽の知識、ピアノの技術が超一流ということが、セリフとレッスンの様子で伝わり、それと相反するエリカの悪趣味が暴露されていく様子は目を覆いたくなるけど、ほんとに上手い。
いろんなものを犠牲にして生きてきたエリカ。自分が幸せな人生を生きていくという想像すらもできなくなってしまい、無表情という表情ですべてを表現するイザベル・ユベールという人は、底知れぬ表現者です。
過干渉のうるさい母親に耐えて、倒錯の世界に迷い込んだら、ああいう表情に人はなるのだな、と納得します。
それにしても音楽、ピアノという崇高なモチーフの扱いは、他の映画とはまったく格が違います。
どのシーン、どのセリフも格調高く、奥深い。学院の教室の描写、ピアノ演奏のシーン、すべてにおいてさすがとしか言いようがありません。
衝撃的なラストも、表現上は淡々と静かにすすみます。エリカが出てくる建物の美しい姿が最後に目に焼き付けられました。
ただ、観てほしい映画かどうかは、また別の話です。