原題:Boyhood(少年時代) 監督・脚本:リチャード・リンクレイター 6才の少年メイソンと、その家族・友人たちの12年間の物語。実際に12年かけて、同じ俳優さんで撮影されています。アメリカでは大絶賛されました。パトリシア・アークエットがアカデミー助演女優賞を受賞しています。6才のボクが、大人になるまで。(字幕版)
あらすじ
メイソンの両親は彼が6才の時に離婚した。学校を転校することになり、友達とも離れてしまうが、母は生活していくのに精いっぱいで話を聞いてくれない。姉のサマンサも不満を口にしてばかり。時々週末を父と姉と3人で過ごす時は楽しかったが。
やがて母が再婚することになり、新しい兄弟たちと大きな家で暮らし始めた。しかししばらくすると新しい父親は横暴で酒飲みだとわかってくる。メイソンはどうしても好きになれない。そうして義父の横暴さはエスカレートしていく。
母はふたたび離婚を決意し、逃げるように3人は家を出るのだった・・。
感想
実際に6才だった少年とその姉がだんだん成長し、親は年をとっていく様子が、12年かけて撮影されています。
離婚という出来事は、子供にとってはまったく理不尽に環境を変えなくてはならないことであり、「またかよ、まったくもう」と言いたげな、どこか物憂い表情の子供たちがそのことをうまく表現しています。
大げさな演出は何もなく、淡々と家族の12年が描かれる。それでもこの映画はアメリカの大人たちの胸を打ったようで、各界の方たちに「いい映画だ」と評されています。
日本人の我々も、離婚ということが身近になっているので、成長期の子供の微妙な気持ちを表した部分に大いに共感できそうです。
ただし、作品の時間が長いですし、特に大きい事件が起こらないので、途中で寝てしまう可能性はけっこう高いかも。
私自身は大人になった2人の子供がいますので、母親の頑張る様子に感心し、パトリシア・アークエットの安心できる演技に引き込まれました。「トゥルー・ロマンス」の時の可愛い女優さんが、成長したなあとしみじみ。
そしてこの映画の総括ともいえるシーンは最後の30分間にあります。18歳になり大学生になって家を出るメイソンに、母親は取り乱します。
成長して巣立っていく息子。いろんなことがあったけどあまりにも一瞬だった。こんなにも早いなんて。
さらにメイソンのほうには新しい出会いがあり、おそらく人生を左右する出会いだと予感させる彼女に、この映画のまとめのようなセリフを言われます。
なんでいきなり出てきた女の子に、そんな大事なこと分かるん?と最後の最後にややいら立ちながら、映画は終わりました。
この実験的な映画を観る価値については、それぞれの映画感によってずいぶん違いがあるでしょう。貴重な2時間45分を費やす価値があるかどうか、私には決められません。
ただし、いいか悪いかと聞かれると、「いい映画」であることは間違いありません。
ラストシーンの会話(ネタバレ)
この短い会話こそ、監督が言わんとしたことに他ならないと思います。
女の子「どうしてみんな『一瞬を逃すな』っていうの? 私はなぜだかそれを逆に考えちゃう。一瞬は私たちを逃さない。」
メイソン「わかるよ・・時間は常に途切れない。一瞬というのは、常に今ある時間のことだ。」