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男はつらいよ お帰り寅さん/映画のあらすじ&感想/すごく安心する映画です

2020年公開。山田洋次監督。「寅さん」てこんなにいい映画だったんだ。改めてこの娯楽作品の完成度の高さに敬服です。
男はつらいよ お帰り 寅さん ポスター 映画 劇場版

あらすじ

葛飾柴又で団子屋を営んでいたさくら(倍賞千恵子)と博(前田吟)の息子・満男(吉岡秀隆)。今はサラリーマンを辞め、小説家を目指している。

小説が賞を取り、出版社からはサイン会を依頼されるようになった満男だったが、心の中にはぽっかり穴が開いたままだった。いつも大事なときにはそばにいてくれた叔父さん、フーテンの寅さんがずっと旅に出たままだったからだ。

サイン会を行う満男の前に、ぐうぜん初恋の女性・泉(後藤久美子)があらわれた。満男の中で何かが弾けるように、何十年も会っていなかった泉と打ち解けていく。

満男は泉をリリー(浅丘ルリ子)の店に連れて行った。リリーは数々の失恋を繰り返した寅さんが一番心を許した女性だった。リリーと寅さんの思い出話をするうちに、満男も泉も心が温かくなるのを感じていた・・。




感想

正月といえば「男はつらいよ」をやっていた昭和の時代が懐かしく思える人にとっては、何度も何度も泣けたことでしょう。実は私もそうです。

もちろん目的は寅さんを懐かしむために観に行ったわけですが、この映画の価値はそれだけではないことに気付きました。

ストーリーも、演出も、編集も、キャスティングもなにもかもほぼ完璧。(ほぼ、です)

三谷幸喜の映画のことを「映画はこういう風に作るんですよ」という教科書のようだ、と書いた記憶がありますが、そのまた上をいく「いい映画は、こういう風に作るんですよ」ということを教えてくれているように思えました。

奇抜であればいい、わかりにくければいい、画角が奇妙であればいい、というものではないのだよ、と言っている声が聞こえてくるようです。

話は、ありきたりな話。挿入される思い出は涙が出るほど懐かしいけれどときめくほどではない。なのに、くぎづけになる。50作まで繰り返されたこの映画の魔力は、ここにあるのです。

それはうまい脚本とリズム感。よどみがなくて優しくて。しかもまったく間延びしていない。日本映画の間延びはあるあるで、後半30分退屈で観るのが辛くなる作品が多い中、これは違う。

画面もほんとうに普通だけれど完璧。一般人がこういう上からの発言して申し訳ないですが、男はつらいよシリーズはほんとうに画が完璧だと思うのです。

このような作品を作ることができるのは、監督のセンスが素晴らしいからで、そういう才能を持っておられる監督はおそらく世界に数えるほど。稀有な存在である山田洋次監督を日本人として誇りたいです。


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