2018年 茶道の先生を演じた樹木希林のセリフと所作の素晴らしいこと。そして黒木華の演技も堪能できました。癒される1時間40分です。
あらすじ
20歳の大学生典子はなんとなく誘われるまま近くの茶道教室に通い始める。
最初はお茶の稽古が見るもの聞くもの初めてのことばかりで異次元の世界のように思えた典子だが、それでも典子はいとこの美智子とともに「武田先生」のもとにずっと通い続ける。
20歳から20年以上、様々なことがあってもお茶はいつも典子とともにあった。人間の毎日の営み、一つとして同じことはない、人の暮らし。お茶は人の営みそのものだと気づいていく典子だった。
感想
樹木希林と黒木華の奇蹟の出会いによって生まれた映画です。美しい多部未華子は出ていますが、黒木華のたたずまいの前ではただの美人。
樹木希林はずいぶん体調が悪かったと思われますが、まったく感じさせない演技です。
いろんな役を演じていますが、お茶の先生という上品で奥の深い役柄を本当にうまくこなしています。袱紗の扱いの説明や、お点前のシーンもご自分でされています。
それにしても茶道というのは深いです。季節やその日に合わせた掛け軸をかける。茶碗の手触りを楽しむ。暑い日は手水鉢の水の勢いを調節して音を大きくする、おまんじゅうの季節感、夏の雨と秋の雨の音の違い、水とお湯の音の違い・・。
特にお湯の音のシーンは感動すら覚えます。お湯のトクトクという音で、感動するとは思わなかった。
典子は不器用で、理屈っぽい性格で、じょうずに生きられない人。
でもお茶というものがあったから、典子の人生が何倍にも豊かになったことでしょう。黒木華の演技は十分にそれを体現していました。
ただもう少し希林さんの体調がよかったら、おそらくもう少し脚本が違っていて、主人公の典子に「日日是好日」の意味や人の生き方について静かにひも解くクライマックスが存在したのではないかと、こころで幻を見ています。
1時間40分という短い時間の作品でした。これといった大きい事件が起きるわけでもなく、ほとんどお茶を点てていて、水の音とピアノの音とともに、典子の成長を見守っていました。
そしてそれは、とてもとても心が癒された時間だったと思います。