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ハナレイ・ベイ/映画の感想&あらすじ/原作は超えられてないけど

2018年 村上春樹の短編小説の映画化。小説は超えられていないけどいい映画です。

ハナレイ・ベイ

あらすじ

ハワイ・カウアイ島のハナレイ・ベイ。サチは毎年この時期になると、ハナレイ・ベイにやってきて、海辺で椅子に座り時を過ごす。

10年前、一人息子のタカシがサーフィン中にサメに襲われて亡くなった。

息子は19歳。何かと反抗し、口論ばかりしていたが、時々は買ってもらったサーフボードを持って「似合う?」と聞くようなところもあった。

日本からやってきたタカシのような年頃の2人。サチは息子のようでほおっておけず仲良くなる。

ある日「海辺で片足のサーファーがいるのを見た」と言う。

なぜ自分にはそれが見えないのか。自分のことを愛していなかったのか、と苦悩するサチだった。




感想

ハナレイ・ベイは「東京奇譚集」という短編集に収められています。よく意味が分からない他の作品たちに比べて、登場人物の描写が素晴らしく、とても印象に残った作品でした。母と息子、というところも自分とリンクしていたと思います。

村上春樹さん、母親をやったこともないのに、なぜここまで気持ちがわかるのだろう。

吉田羊さんの台詞の7割ぐらいは英語でしたし、ピアノのシーンもあり、また終始凛とした女性でありながら、母親としての感情をむき出しにしていく過程もあり、なかなかの難役だったのではないでしょうか。

松永大司監督も、並々ならぬ情熱で挑んだようで、ダメだしもすごく多かったそうです。確かに村上春樹作品は、ファンの注目も集まるでしょうから。

海で波でサーファーで。悲しいまでの美しい景色の中で、オープニングの曲もおしゃれで。これはなかなかやったな、という感じで最後の30分となりました。

物語はクライマックス。ここをどうするかで映画が決まります。大木に何度も何度もぶち当たる長いシーン。吉田羊さんは熱演だったのですが、見ているほうがちょっと置き去りになった時間がありました。とても残念。

ところで、日本人サーファー役の村上虹郎くん。彼の存在感と「瞳」は唯一無二です。英語の発音もよかった。(吉田さんも良かったです)

ラストシーンの一瞬のサチの表情。母親のほほえみ。あの表情で映画全体が救われました。すぐに画面が暗転し「愛の喜びは」が流れます。ここで涙が出ました。私も母だからかな。