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『ブリッジ・オブ・スパイ』映画のあらすじ&感想/見ごたえあるスピルバーグ作品

2015年 スティーブン・スピルバーグ監督、トム・ハンクス主演。冷戦時代に実際に起きた、ソ連のスパイとアメリカ兵捕虜との交換に奔走した弁護士ドノヴァンの活躍を描きます。ブリッジ・オブ・スパイ (字幕版)

あらすじ

1957年アメリカとソ連の冷戦真っただ中の時代、画家を装ってスパイ活動を行っていたソ連のスパイ・アベル(マーク・ライランス)はブルックリンで逮捕された。

彼の裁判に「弁護をしてほしい」と経験豊富で人望もあるドノヴァン(トム・ハンクス)に白羽の矢が立つ。ドノヴァンは最初は固辞するが、結局引き受ける。

しかしその裁判は公明正大であることをアピールするために弁護士を立てたというだけで、アベルの有罪はすでに確定したようなものだった。

それでもドノヴァンはアベルと会って、ソ連に忠誠を誓うまっすぐな人間性と温厚な人柄に触れ、正当な裁判にしなければならないと考えるようになる。

しかしソ連のスパイを擁護することは、家族に危険が及ぶほど、アメリカ国民の民意に背くことだった。

同じとき、アメリカ空軍の精鋭たちは、U-2偵察機ではるか上空からソ連の基地などの機密情報を撮影する任務を言い渡される。この秘密任務がドノヴァンの裁判に大きく関わってくることになる・・。

感想

冷戦時代というと、ケネディ大統領の頃ですが、こんなにアメリカとソ連がやばい状態だったとは知らなかったです。ドノヴァンはこの後も別の人質事件の交渉を担当し、成功させます。彼がいなかったらいまごろ2つの国はどうなっていたのか、日本だって他人事ではなかったはずです。

そういう深刻な、重大な、大人の男たちが対峙する映画って、お久しぶりな感じがします。60年代はまだ男性の時代。上質なコートを着て、帽子をかぶり暗躍する男たち。トム・ハンクスをはじめとする男たちの駆け引きの会話は気持ちいいほどシブイです。

トム・ハンクスも年齢を重ねたなあ、でもこの役は年齢相応の重厚さが出ていて非常にいいなあ、と思います。

それからスパイ役のマーク・ライランス。この役でアカデミー助演男優賞を受賞しました。実に存在感のある役者さんです。また弁護士のドノヴァンが応援したくなるような誠実な人柄をうまく演じていました。ノーラン監督の「ダンケルク」でもいい演技していましたね。

東ベルリンの寒い街並みを歩くドノヴァン。まだ瓦礫の残るこの街の、作り始めたばかりの壁で起こる悲劇を目の当たりにしながら、こんなことは終わりにしなければならないと思う彼でしたが、その思いが現実のものになるのはおよそ30年先のことでした。