2008年公開 デビッド・フィンチャー監督。1922年に書かれたフィッツジェラルドの短編をもとにしています。
日本映画の「飛ぶ夢をしばらく見ない」を思い出しました。こちらは山田太一原作で、女性が若返るのですが。どちらかというと、山田太一版が私は好き。
あらすじ
1918年、ニューオリンズの駅に大時計が掲げられた。しかしその時計は針が反対に回るように作られていた。時計職人は戦争で息子を亡くしており、「時が戻れば息子が帰ってくる。申し訳ないが今の私が作れる時計はこれだ」と人々に挨拶した。
時を同じくして、ニューオリンズの裕福な家で一人の男の子が生まれた。しかし男の子は老人のように皺くちゃの状態で、母親は間もなく死んでしまうのだった。父親は絶望し、男の子を街の老人ホームの前に捨ててしまう。
男の子は老人ホームで働く女性に拾われ、ベンジャミンと名付けられた。皺くちゃの老人の姿で体中が弱っていたベンジャミンは、医師に長くは生きられないと告げられていた。
しかし育ての両親に大切にされながら、老人ホームの老人たちとともに車椅子に乗り、ベンジャミンは成長していく。
生まれてから12年後、ベンジャミンは入居者の孫であるデイジーと運命の出会いをする。ブルーの瞳の少女にベンジャミンは恋をしたが、杖を突いた老人のベンジャミンがデイジーと遊ぶことは難しかった。
時が流れ17歳になったベンジャミンはさらに若返り、自分1人の力で生きていこうと決心する。ベンジャミンは船乗りになるため、老人ホームを出ていくのだった。デイジーに「手紙を書く」ことを約束して・・。
感想
話はどうってことない、と言うと言いすぎですが、人と違う順序で人生を生きなくてはならないなんて、そりゃあつらいことだと思うだけなのに、すごい脚色によって素晴らしい作品に仕上がっています。
若返るブラッド・ピットなんて、そう考えただけでも素敵なのに、実際本当に素敵に演ってました。
ケイト・ブランシェットの深みのある演技力はもちろん健在。演技力で圧倒して終始お姉さんに見えました。
秒針が反対に回る不思議な大時計、やさしい黒人夫婦の両親、怪しい年上の人妻、美しい幼馴染、第二次大戦、ハチドリ。
これらが原作にあるかどうかわかりませんが、物語を終始彩るすてきな装飾品であることは間違いありません。
ですが、この映画の本筋は「人とは逆の人生を生きてしまうことの不幸」です。その本質のところで観客の心を動かすには、主役本人の演技力がことを左右するのは間違いありません。
さて果たしてブラッド・ピットは、どうだったんでしょう。ただの老け役、若返りショーだけのためのブラッド・ピットだったのでしょうか。彼の演技力で映画を見た人の心は動いたのでしょうか。それとも・・。