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超大作

『クラウド・アトラス』映画のあらすじと感想/力作で名作です

2012年 ウォシャウスキー姉弟による、膨大な予算を投じた大作。かなりの良作ですが大ヒットとはならなかったのはなぜだろう。

あらすじ

1849年 米国の弁護士ユーイング(ジム・スタージェス)は航海の帰路、脱走奴隷オトゥアを助けた。ユーイングは悪徳な医者のグース(トム・ハンクス)に密かに毒を盛られ体調は悪化していく・・。

1931年 作曲家を志す英国の青年フロビシャー(ベン・ウィショー)は、往年の大作曲家エアズ(ジム・ブロードベント)に採譜係として雇われる。自分の曲を作曲しながら採譜をする日々だったが、もうすぐ完成する新しい交響曲「クラウド・アトラス」をエアズに奪われそうになる・・。

1973年 フロビシャーの恋人だったシックススミスは米国で物理学者となり、フックス(ヒュー・グラント)らが進める原子力発電所計画に従事していた。しかしその計画には重大な欠陥があり、報告書を記者のルイサ・レイ(ハル・ベリー)に託そうとするが、殺し屋(ヒューゴ・ウィーヴィング)に命を奪われてしまう・・

2012年の英国 編集者カヴェンディッシュ(ジム・ブロードベント)は、作家ダーモット(トム・ハンクス)の舎弟に恐喝され兄のデニー(ヒュー・グラント)に助けを求める。しかし兄弟は過去の因縁があり、カヴェンディッシュは騙されて酷い老人ホームに入れられてしまう・・。

2144年 統一政府が統治する未来社会では、遺伝子操作で作られた合成人間(複製種)たちが人間(純血種)に支配されていた。ネオソウルで給仕係をしていた複製種ソンミ451(ペ・ドゥナ)は、革命家チャン(ジム・スタージェス)に救出され、解放されたはずの仲間たちが複製種の食事にされている実態を知らされる。

2321年 文明の崩壊した地球。ある島ではザックリー(トム・ハンクス)をはじめとする島民たちは凶悪な人食い族に怯えながら暮らしていた。ある日「昔の人」の技術を持つプレシエント族のメロニム(ハル・ベリー)が訪れる。人々が恐れる「悪魔の山」へのガイドを探しに来たのだ・・。

感想

6つの物語が、交互に入り交じり展開するグランドホテル方式の大作。

それぞれの物語は共通した俳優によって描かれており、「過去と現在、人は他者とつながる・・」というメッセージをちゃんと受け取ることができました。

私はこの映画、非常に良くできていると思うのですが、なぜだかあまり大ヒットとは言えずじまいでした。原因があるとしたら、アジア人の顔の特殊メークが変だったからかな?

でもそこは意外と大事なところだと思います。ソンミ(ペ・ドゥナ)が衛星回線を使って語りかける言葉、

命は自分だけのものではない。子宮から墓まで、人は他者とつながる。過去も現在も、すべての罪が、あらゆる善意が、未来を作る。

これがこの映画の主題であるからです。この2144年の物語こそが、この映画が観客に伝えたいことそのものであるはずですが、白人たちをアジア人にする特殊メイクがあまりに酷くて話に集中できなくなっています。

私もアジア人なので「あんなふうに見えるのかしら」と悲しい気持ちになります。

それでもこの映画、大作であり力作であることは間違いありません。

また、特に難解というわけでもないのに「難解」と言われてるのはなんとなく残念です。

映画の感想は人それぞれ。好きな映画もひとりひとり違うはず。「難解」と感じた人はこの映画が好みではなかったということでしょう。

過去から未来へと続いていく人間の営みは、脈々と脈々とつながって行くのだ・・

ウォシャウスキー姉弟たちが発信しているメッセージが、あなたには聞こえるでしょうか。