あのとき見逃した映画は名作だったかもしれない
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『ブラックレイン』映画のあらすじ&感想/松田優作の遺作

1989年 監督:リドリー・スコット。松田優作が世界に認められた作品であり、遺作でもあります。

あらすじ

ニューヨーク市警の刑事ニック(マイケル・ダグラス)は、レストランで日本のヤクザが佐藤(松田優作)に殺されるのを目撃する。

不敵な笑いを浮かべる不気味な男、佐藤。なんとか追い詰めて逮捕したニックと同僚のチャーリー(アンディ・ガルシア)は、佐藤を日本に護送することになる。

しかし空港で佐藤に逃げられてしまい、大阪府警の捜査に強引に加わろうとする。しかし権限が無いと銃などを押収され、刑事の松本(高倉健)が見張り役に着く・・。

感想

1990年ごろ、レンタルビデオを借りて観たあと、テレビ放映でも観ていましたが、今回改めて見直し、こんなにいい映画だったかなと素直な感想を持ちました。

日本の大阪の街や警察庁舎、製鐵所、それらはどことなく「ブレードランナー」を彷彿とさせます。

若山富三郎演じるヤクザの親分の巻き舌の関西弁、使用されたバイクや車両、組長たちが集まる家屋の中の設えや採光の美しさ。すべて監督の凝りに凝ったコレクションのようです。

それなのに一番最初に観たときは、「これ日本じゃないみたいじゃん、健さん主役じゃないじゃん」という感想しか持てなかった。まったくもって情けない自分でした。

令和となった今、改めて観るとこの映画の舞台の日本は、今から30年前の日本そのものです。30年経って、ようやく俯瞰で日本を見られるようになったかな。

つまり、当時感じた違和感が、今は無くなっているということ。そうやって歴史は変化し映画は作られた後に生き続けているということです。名作であればなおさら。

さて、「ブラック・レイン」といえば松田優作です。この人が病に侵されていなかったら、どのような俳優になっていたのだろう。今もその怪演は色褪せることはありません。

もうひとつ見逃しがちになっていた、高倉健の存在。真面目な刑事役で脇役、というので当時がっかりしたのを憶えていますが、実はかなりいい演技をしています。

ニック(マイケル・ダグラス)と屋台のうどんを食べるシーンで、ニックが不正をやっていたのを正すのですが、その眼力は完全にマイケルを食っていました。このあと2人の関係が変わり、ニック自身も変わって行く大事なシーンです。

「ブラック・レイン」黒い雨。戦争で空襲や原爆の後に降る汚れた雨。まだ第二次世界大戦の戦後の記憶が日本に残っていた1989年。必死で復興し産業大国になった日本の当時の勢いが、映像にしっかり投影されています。

松田優作の映画、というだけでない、いろんな意味で名作であることを改めて実感できた、3回目の鑑賞でした。