2021年 山内マリコの同名小説が原作。「東京にはいろんな階級の人が住んでいる。しかも彼らは決して出会うことは無い。」物語の冒頭で語られるセリフは、妙に納得でき、なぜか心に残ります。
あらすじ
都会に生まれ、箱入り娘として育てられた20代後半の華子(門脇麦)。「結婚=幸せ」と信じて疑わない彼女は、結婚を考えていた恋人に振られ、初めて人生の岐路に立たされる。あらゆる手段でお相手探しに奔走し、ハンサムで家柄も良い弁護士・幸一郎(高良健吾)との結婚が決まるが……。
一方、富山から上京し東京で働く美紀(水原希子)は、恋人もおらず仕事にやりがいもなく、都会にしがみつく意味を見いだせずにいた。そんな2人の人生が交錯したことで、それぞれに思いも寄らない世界がひらけていく。映画com.
感想
ただの上流社会の話かと思ったら、実は人が人生をどう生きるかというテーマを描いています。
夫の愛人
主人公の華子は、出会わないはずの別の世界の人間に出会いました。
その出会いは、夫の愛人といういびつな出会いではありましたが、なぜか彼女を憎むという感情にはなりませんでした。自分とはあまりに違う境遇で生きてきた女性。その人に夫の幸一郎は魅かれていた。そのことは自分が幸一郎のことをいかに何も知らなかったかを気づかせました。
いや実はずっと前からわかっていたのです。幸一郎が何を考えているのかわからないということ、そして彼のほうも華子が考えていることに興味がないということが・・。
貴族の暮らし
貴族のような生活をしている民族が、同じ国にいるんだと感心する一方、それぞれの階級ごとに深い悩みはあるものだということは理解しました。
ただしかし、食べるものに困ることが無い人たちの悩みはどことなくかわいいとしか思えないけれど。
華子はどう自立していくのか。もう少し具体的に語られたら、それはドキュメントになってしまうので、このぐらい控えめに薄いカーテン越しぐらいの描写が心地よかったです。
余韻が残る作品
それにしてもこのお話、ティンカーベルのような役割の逸子(石橋静河)の存在はとても大きい。彼女は華子の友人で同じ階級の人ですが、この人がいなかったら、話が何も進まない。
それに石橋静河の真っすぐなセリフは実にすがすがしいです。まっすぐ人に届く話し方です。姿勢も良くて、何かを秘めた人に見える。いい女優さんです。
べた褒めしてしまいましたが、門脇麦も水原希子もとてもいい仕事をしました。
ストーリーに特に緩急が無いにもかかわらず、とても余韻が残る映画でした。