あのとき見逃した映画は名作だったかもしれない
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『私をくいとめて』映画のあらすじ&感想

2020年 綿矢りさの原作小説の映画化。主演:のん。これは意外に良かった、という評判通りの作品だと思いました。「のん」という俳優の、他の人には無い才能を知った気がします。

あらすじ

何年も恋人がおらず、ひとりきりの暮らしにもすっかり慣れた31歳の黒田みつ子。そんな彼女が楽しく平和に生活できているのには、ある理由があった。

彼女の脳内にはもう1人の自分である相談役「A」が存在し、人間関係や身の振り方に迷った際にはいつも正しい答えをくれるのだ。

ある日、みつ子は取引先の若手営業マン・多田に恋心を抱く。かつてのように勇気を出せない自分に戸惑いながらも、一歩前へ踏み出すことを決意するみつ子だったが……。引用元: 映画.com

感想

のんが出演する作品を、実写でしっかりと見るのは久しぶり。基本的にはあまちゃんのときの雰囲気と変わっていないが、それでもこの人は他の俳優たちが持っていない何かを持っているように思えます。

実年齢よりもずいぶん年上の役で、実際見るからにアラサーには見えないのですが、だがそれでも「おひとり様」の世界にどっぷりはまり、その自分の世界からなかなか抜け出せない女性を、何の違和感もなく演じ、そればかりかこちらは引き込まれていき、最後までノンストップで楽しませてくれました。

こんな才能のある人だったのか、と改めて感心し、「この世界の片隅に」の成功は偶然ではなかったのだな、と申し訳ない気持ちに。

さらに映画の脚本も演出も足し過ぎず引き過ぎない、ちょうどいい感じが、実に気持ち良いドラマになっています。

みつ子の脳内の「A」の声が中村倫也なのも絶妙。冷たいのか甘いのかわからない男の声というのが、これ以上無く非現実的で納得できる。

もしかしたら恋人がいない時期の一人暮らしの女性は、だれでもこんなふうに頭の中の自分自身と仲良くしているのかもしれないと思えてくる。

人が人と繋がる、というのは大人になればなるほどやっかいで面倒くさく、億劫になっていくものではあります。