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『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』映画のあらすじ&感想

1964年 スタンリー・キューブリック監督。「破滅への2時間」という真面目な小説をもとにストーリーを構成しているうちに「こんな題材はばかげている」とキューブリック監督が喜劇に変更して作り上げました。まさにその発想の転換は天才的。最高の喜劇が誕生したと思います。

あらすじ

アメリカ空軍のリッパー准将は精神に異常をきたし、指揮下の爆撃機34機にソ連(ロシア)への核攻撃を命令した。巻き込まれた部下のマンドレイク大佐(ピーター・セラーズ)はリッパー准将をなんとか説得しようとする。

それを知った大統領(ピーター・セラーズ)や軍高官や大統領科学顧問のストレンジラヴ博士(ピーター・セラーズ)らは、戦略指令室に集まった。さらにソ連大使も呼び、ソ連首相と電話で話をするが、ソ連は核攻撃されると自動的に爆発して地球上の生物を死滅させる「皆殺し装置」配備していると告げられる。近日そのことは発表するつもりだった、と。

34機の爆撃機はロックされており、攻撃を回避するにはリッパー准将のみが知る3桁のコードを入力しなければならなかった・・。

感想

ピーター・セラーズという天才的喜劇俳優さんがいました。ピンクパンサーのクルーゾー警部と言っても、知らない人が多いかもしれません。

もう時代が新しくなってしまいました。しかし後世に語り継ぎたい映画があるのと同じように、語り継ぎたい役者さんがいらっしゃいます。ピーター・セラーズがその一人です。

奇才スタンリー・キューブリックのモノクロで描かれた喜劇。ほんとに滑稽な首脳ばかりが出てくるけど、あながち荒唐無稽とは言えないような。

そのあまりにも滑稽な博士や大統領など3人を演じているピーター・セラーズ。彼の怪演無しではこの映画は成り立たないかもしれません。

冒頭で「映画はフィクションであり、現実には起こりえない」とアメリカ空軍による注釈が出ますが、その注釈がすでに喜劇的です。

軍の高官のジョージ・C・スコットの熱演も光るこの作品。キューブリックの、辛口の笑いのセンスが、半世紀以上経った今でも十分通用するというのは、人間たちはいつの時代も相変わらずなのかなと感じます。

尚、なぜ「博士の異常な愛情」なのかというと、博士の名前がストレンジラブで、それを直訳しただけみたいです。ははは。