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『百円の恋』映画のあらすじ&感想

2014年公開 安藤サクラ主演。どうしょうもない人の再生物語。安藤サクラの体当たり演技がすごいです。

あらすじ

32歳の引きこもりの一子は、実家の弁当屋を手伝うわけでもなく、自堕落な生活を送っていた。夜な夜な百円コンビニにジャンクフードを買いに行き、その帰りに町のボクシングジムを覗き見するのが日課。そこには36歳のボクサーの狩野がいた。

そんなある日出戻りの妹に嫌味を言われた挙句大ゲンカとなり、一子は家を出て一人暮らしをすることになる。もちろん金は母親に貰って。

いつも行っていたコンビニで働くことになった一子のもとに、ボクシングジムの狩野がバナナを買いに来る。店にバナナを忘れていった狩野に一子が届けに行くと、狩野は突然デートに誘ってきた・・。

感想

何もない女と何もない男が出会い、何もない女は同時にボクシングにも出会った。一子の人生はここからようやく始まったように見えます。

死んだように生きていたこれまでの日々とは全く違う一子になっていく様子を、安藤サクラが体を張って表現しています。トレーニングや、キレのあるシャドウボクシングもさることながら、最低の男に乱暴されるシーンや、狩野とのラブシーンも。

狩野自身もそんな一子を見て何かしら揺さぶられます。さらに一子の家族たちも、一子の試合を見てそれぞれの心に何かが灯ったような表情をしています。

一癖ある共演者たちのさりげない名演技もこの映画をささえています。

女を捨てていた、いや人間を捨てていた一子が、ボクシングの試合を見てから弾かれたように表情を変える。死んでいた人間が少しずつ生き返っていく、そして感情のある人間へと成長していく様子は、ボクシングの上達と体形の変化というわかりやすいツールが功を奏しました。

「ミリオンダラー・ベイビー」ほどではないですが、試合のシーンもとても迫力あります。

何か心のよりどころを得るということが、人間にとって最強の味方になる。このことはすべての人において、自分自身を再生させたいと思う場面での最大のヒントになると思いました。