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『ユナイテッド93』映画のあらすじ&感想/真に迫ったノンフィクション

2006年公開 アメリカ同時多発テロでハイジャックされた4機のうち、唯一目標の建物に達しなかったユナイテッド93便の、離陸から墜落までの機内や地上関係者のやりとりを再現したノンフィクション映画です。
ユナイテッド93 (字幕版)

あらすじ

2001年9月11日、ユナイテッド93便がニューアーク空港から予定を30分遅れて出発しようとしていた頃、べつの2機がワールドトレードセンター、国防総省(ペンタゴン)にそれぞれ激突、墜落した。

ユナイテッド93便も操縦室を占拠されるが、事件を知った乗客たちはテロリストに立ち向かい、なんとかして操縦席を奪還しようとする・・。

感想

この映画の監督はボーン・シリーズのポール・グリーングラス。もともとドキュメンタリーも多く手掛けていました。あのボーンシリーズの息もつかせぬカット割りは、機内の混乱のシーンでも再現されていました。

わざと無名の役者さんを使い、客室乗務員経験者も多く採用されたとのこと。事件を再現するのに綿密な調査、遺族への取材を重ねたそうです。

無線のシーンで本当の音声が使われたそうですが、「吹替版」で見たのでそれは聞けませんでした。しかし混乱した地上と機内の会話は、字幕よりも吹替のほうが伝わりやすかったと思います。

乗客の方たちはいったいどんな気持ちだったのでしょうか。揺れる飛行機の揺れる画面。クライマックスの乗客がテロリストに突進するシーン。口ぐちに叫び声。操縦桿を離さないテロリスト。そして地表が近づく・・。

ここで画面が暗転し、生存者がいなかったことを説明する文言が流れました。

この映画を、「ジェイソン・ボーンのように有名俳優がテロリストに名ゼリフを吐く」というように作ることもできたでしょう。

しかしこれがノンフィクションです。このように飛行機は落ちたのです。この混乱した、錯綜した情報の、かみ合わない会話の、まったくこの通りではないにしても、これは真に迫っています。

111分の映画は終わりました。しかし私たちの脳裏の中で墜落した機体が燃えていました。