2021年公開。水俣病という公害問題があったことを、日本人でありながら忘れていました。そしていまだにこの問題が解決していないことも知らなかったのです。
あらすじ
1971年、ニューヨーク。かつてアメリカを代表する写真家と称えられたユージン・スミス(ジョニー・デップ)は、現在は酒に溺れる日々を送っていた。
そんなある日、アイリーン(美波)と名乗る女性から、熊本県水俣市のチッソ工場が海に流す有害物質によって苦しんでいる人々を撮影してほしいと頼まれる。そこで彼が見たのは、水銀に冒され歩くことも話すこともできない子どもたちの姿や、激化する抗議運動、そしてそれを力で押さえ込もうとする工場側という信じられない光景だった。
衝撃を受けながらも冷静にカメラを向け続けるユージンだったが、やがて自らも危険にさらされてしまう。追い詰められた彼は水俣病と共に生きる人々に、あることを提案。ユージンが撮影した写真は、彼自身の人生と世界を変えることになる。映画.com
感想
それにしても、こんな恥ずかしい形で日本の公害がクローズアップされようとは恥ずかしい限り。
その実在の著名な写真家ユージン・スミスを演じたジョニー・デップですが、さぞや起死回生の熱演を見せてくれるかと思えば、やはりジョニー・デップはジョニー・デップでありました。
とはいえ、映画は非常に素晴らしく、随所に涙ぐむところがあり、心を動かされる映画ではありました。間違いなく素晴らしい映画と言えます。
特筆すべきは、ビル・ナイ演じるLIFE編集長の渋い名演技。デップとの掛け合いのシーンでは終始圧倒しています。
この作品はジョニー・デップによるジョニー・デップのための作品であるにもかかわらず、彼はやはり飲んだくれのオヤジをお洒落に演じていた。
頑張っていたのかもしれませんが、だけどまだ足りない。水俣の「入浴する母と子」の写真を撮ることができたユージンがどんなに感動していたか、もどかしいほど伝わってこなかった。
ただ、あの写真がユージンによって撮影されたという事実がそこにあるおかげで、写真から、とてつもなく大きなものが伝わってきた。そこに涙が出たのです。だから映画は素晴らしい。しかし決してジョニーのおかげではないのです。(ちなみに私はジョニー・デップの大ファンです)
ユージン・スミスという写真家が撮影した写真。その白黒写真がスクリーンに映し出されたとき、偽物のセリフは何一つ必要なくなりました。
神々しいようなその写真は映画のクライマックスにふさわしく、いまもユージンの代表作と言われるその1枚に、すべて持っていかれてしまいました。
「MINAMATA」その言葉が世界中で忘れられない言葉となった瞬間です。