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『砂の器』映画のあらすじ&感想/致命的に残念なところが

1974年 野村芳太郎監督。日本映画の傑作として高く評価されています。原作は松本清張の有名すぎる作品。「砂の器」というの題は、実にもの悲しい響きで、ストーリーをよく現している秀逸な題名だと思います。

あらすじ

東京蒲田にある電車の操車場で、男性の撲殺死体が見つかった。

前日の夜に近くのスナックに2人の男が訪れていたが、1人は東北訛りがあり、「カメダ」という言葉だけが手がかり。

捜査本部の今西刑事はその情報をもとに被害者は東北地方の「カメダ」出身だと推測する。

しかし必死の操作にもかかわらず被害者の身元はまったく判明しなかった・・。

感想

「砂の器」は松本清張の作品の中でも、代表する作品として紹介される長編推理小説です。テレビドラマ化も何度もされています。

実は映画を観た後、犯人の動機が今一つ呑み込めなかったので、原作をもう一度読んでみました。

新聞小説だったためか展開がゆっくりで丁寧に登場人物を描いています。

原作を読んで気付いたことは、映画のシナリオは非常によくできていで、原作の雰囲気を壊さずしかも短い時間にまとめ上げ、犯人の背景を十分すぎるほど描いているということ。

ただそれなのに動機がよくわからなかったのは、「描き過ぎ」な感があり、クライマックスのシーンが「長い」と感じてしまうためかもしれません。

小説では動機はさらりと説明されたのみ。でもそのほうが撲殺までする心理をすんなり理解できます。

文字ではなく映像にすることではっきりわかった部分もある反面、読者の心理にゆだねられている部分を台無しにしてしまうのだなと、また小説の映像化の難しさを感じました。

とはいえこの作品は松本清張作品の映画の中でももっとも傑作と評価されています。優れたシナリオで再現された清張ワールドにぐいぐい引き込まれます。大長編の小説をあれほどうまく整理してまとめ上げたのは本当に凄いです。

ただ、クライマックスのシーンが「長すぎる」のが唯一、しかも致命的に残念です。