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『64-ロクヨン』映画のあらすじ&感想/大作映画が空回り

2016年 未曾有の刑事ものブームだった思うのですが、その流れでこの「64」も前後編の2部作という超大作として鳴り物入りで公開されました。ですが・・
64-ロクヨン-後編

あらすじ

わずか7日間で幕を閉じた昭和64年、7歳の少女が誘拐され、殺害される事件が起こった。刑事たちの必死の捜査もむなしく事件は迷宮入りし、通称「64」と呼ばれるようになった。担当刑事の三上はその後刑事課から異動し、広報担当になっていた。

「64」から14年経ったある日、警察庁長官が視察に訪れることになる。被害者の父親と面会するはずだったが、父親は面会を拒否するのだった・・。

感想

佐藤浩市という役者さんは、名実ともに日本映画界に無くてはならない大俳優です。ハンサムだったし演技力も抜群。主役もわき役もこなす、素晴らしい俳優さんです。その佐藤浩市さん主演の超大作。他の出演者も並々ならぬ覚悟で臨んだことでしょう。みんな大熱演で、もう熱いのなんのって・・。

あのー、野球もね、9人全部4番バッターではゲームにならないのです。それぞれの役割、メリハリがあってドラマは成り立つ。わかっているとは思います。すごいスタッフで作っているのですから。だけど、でも、あまりの熱さに前編を見ただけで後編を見る気がしなくなってしまいました。まあ見ましたけど。

この原作は横山秀夫先生が、脳梗塞の後遺症と闘いながら、推敲に推敲を重ね、出版中止、全面改稿を経てようやく出版された作品だそうです。そのような作品を映画化するにあたり、2部作、オールスターキャストと大々的に企画され、製作費、宣伝費もたくさんかけて作られました。

なのですが、なのですが、この作品にかける俳優さんたちスタッフさんたち一人一人の思いはわかりますが、
が、が、「空回りしています!」

それがこの作品への感想のすべてです。すごくいいシーンもあった。いい演技もあった。みなさんがんばってる。刑事も記者も興奮して大声でしゃべる。声の通る人が勝ち。だから佐藤浩市はさすがに一番光ってた。(ちょっと老けたなあと思いましたが)

が、しかし、映画は「演技合戦」ではありません。何を観客に伝えたいのかを、忘れていなかったでしょうか。
私たちに伝えたいことが何だったのか。あの俳優さんひとりひとりの熱意を、もっとうまくまとめられなかったのか。そもそも2部作にする必要があったのか。それでも原作のすべては伝えきれていないというではないですか。

この作品で極めて秀逸だった永瀬正敏さん。この人の静かな演技に。映画は救われていると思います。

俳優さんの顔見世興行みたいな、世界に通用しない映画は、もう日本人にも通用しなくなってきていますよ。