2021年 ノオミ・ラパスが不穏な雰囲気を醸し出すが、決してホラー映画ではありません。
あらすじ
アイスランドの山間に住む羊飼いの夫婦イングヴァルとマリア(ノオミ・ラパス)が羊の出産に立ち会うと、羊ではない何かが産まれてくる。
子どもを亡くしていた2人は、その「何か」に「アダ」と名付け育てることにする。アダとの生活は幸せな時間だったが、やがてアダは2人を破滅へと導いていく。映画.com
感想
まず、この映画のキャッチコピーは「禁断(タブー)が生まれる」ですが、その言葉はちょっと違うかなあと感じました。
異形の何かが生まれた、という事実そのものが映画のテーマと思わせるような宣伝文句をチラシやホームページで眼にしましたが、ちゃんと映画観て書いたのでしょうか。
それにこの映画はホラーではありません。もっと言えば、この映画はジャンル分けできない作品だと思いました。(ジャンル分けすることって無意味だなと、最近少し感じています)
メスの羊が、異形の何かを生みました。それが何によってもたらされたのか、冒頭シーンの羊たちが何かを恐れる様子で示唆されていました。
その冒頭シーンは最後の驚愕シーンに繋がります。それに至るまでの淡々とした展開の合間に挟まれる、何か不吉な予感が、突然現実になります。
さらに、素晴らしいと表現していいような異形の生き物の可愛らしい仕草と声。ものすごく不穏な雰囲気を醸し出すノオミ・ラパスという存在。
すべてがラストシーンへの布石となっているのですが・・
その驚愕のシーンの出来栄えが良くない。ビジュアル、造形、センス、とにかく良くない。そのためこれまでの布石がすべてとは言わないが、水の泡になり、観客はストーリーを受け入れられない。
ここは、映像で納得させる。そうでなければいけなかったと思います。
観ればわかりますが、なぜ賛否が分かれるのか、気持ちが整理できないという人が出てくるのかわかります。
最後のシーンで人間への怒りが具現化したような存在が現れる、そのショッキングで新しい時間に、ちゃんと完成された「モノ」でなければ、好意的に受け入れることはできません。
ノオミの怖い美しさを超える、荒々しい神のような、そんな存在が「ほんとうにいるのかもしれない」と思わせるほどの完成度でなくては、この作品は成功しなかったということに、ノオミは気づいているでしょうか。