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『風立ちぬ』映画のあらすじ&感想/ユーミンの曲が心に沁みます

2013年 宮崎駿監督・脚本 「堀越二郎・堀辰雄に敬意をこめて」とポスターに記されています。

「風立ちぬ」とは作家・堀辰雄の代表作で、長野で油絵を描く少女綾子と出会い病気で亡くした経験が題材となっています。

堀越二郎とは、実際の航空技術者です。実際のエピソードを下敷きに、人物像などオリジナルの要素が肉付けされています。

宮崎監督のお父さんが飛行機の設計技術者で、最初の奥さんを結核で亡くしていますが、そのことも人物設定に関わっているようです。

あらすじ

二郎は飛行機に憧れる少年。夢に出てきたイタリアのカブローニ伯爵に背中を押されるように、飛行機の設計者になることを志す。

1923年、東京帝国大学在学中に関東大震災が起こり、汽車の中で菜穂子という女性とその女中の絹を助けた。

卒業した二郎は「三菱」に入社し、飛行機の設計に携わる。しかし初めて設計した飛行機は試験飛行で大破してしまった。

落ち込んで避暑地に滞在する二郎だったが、そこで思いがけず菜穂子と再会した。

短い滞在の中でも心を通わせ、二郎は菜穂子に結婚を申し込んだ。しかし菜穂子は結核であることを打ち明け、二郎は病気が治るまで待つことを約束した。

時代は大きな戦争へと向かっていた。会社は新しい飛行機の開発を軍に依頼されている。二郎の仕事も忙しくなってきた。入院した菜穂子のそばにいたいが、それもできない。

あるとき、菜穂子は病気の体をおして、二郎のもとへ一人でやってきた。少しでも長く一緒にいたいという思いだった。

感想とネタバレ

宮崎監督は、「この映画は、自分の夢に忠実にまっすぐ進んだ人物を描きたいのである」と言っています。

何十年も前の、今では思い描くのも難しいこの時代に、ただひたむきに前を向いて、人は生きていたのだ、ということを言いたいのだと思います。

二郎はそれが戦争に使われるとかどうでもよくて、ただ飛行機を開発したかった。そして飛ばしたかった。

菜穂子はそういう男の人を愛して、病気で死ぬとわかっていても、そんなことより一緒にいたかった。

そして菜穂子は亡くなり、戦争で飛行機は悲惨な乗り物となる。

ですが夢に向かってまっすぐ進んだこと、愛する女性といっしょになったこと、それがすべて戦争という邪悪な黒い色に塗りつぶされてしまうのは違うと思うのです。

二郎には辛い思い出が残っても、強い風が立ちのぼるように、生きていってほしい。

この映画のポスターは真っ青な空の色です。それを私たちはこの映画の印象として心にとどめたいと思います。

菜穂子の部屋の窓へ、紙飛行機を二郎が飛ばすほのぼのしたシーンといっしょに。

 

この映画は、大人向けにつくられていて、人物画はこれまでのジブリ風なのですが、吹替をほぼ俳優さんが行っていて、全体に押さえたトーンになっています。

ストーリーも大人仕様なのですが、私はなんだか無理に背伸びしているように思えました。

喫煙シーンが波紋を呼びましたが、時代設定で仕方がなかったとはいえ、もう少し控えめにしてほしかったです。

私がもう1つ残念に思うのは二郎の声をアニメ監督の庵野さんが行っているということ。

いいお声ではあるんです。ただ、絵と合ってないと思います。

映画の主題に関わる大きいことではないかもしれないのですが、喫煙シーンと主人公の声。こういうところにこだわる映画こそが、それこそが名作だと私は思っています。