あのとき見逃した映画は名作だったかもしれない
新旧の映画の中から
名作を掘り起こすレビューサイト
恋愛

『あなたの名前を呼べたなら』映画のあらすじ&感想/踊らない静かなインド映画

2018年 ムンバイの生き生きした街の様子を背景に、切ないラブストーリーが描かれます。

あらすじ

経済の発展が著しいインドのムンバイで農村出身のラトナはファッションデザイナーを夢見ながら、メイドとして働いていた。

夫を亡くしたラトナは建設会社の御曹司アシュヴィンの新婚家庭で住み込みで働く予定だった。しかし、婚約者の浮気が発覚して直前で破談となってしまい、広すぎる高級マンションに1人で暮らすことになった傷心のアシュヴィンを気遣いながら、ラトナは彼の身の回りの世話をしていた。

ある日、ラトナはアシュヴィンにあるお願いごとをする。そのことから2人の距離が徐々に近くなっていくが……。映画com.

感想

身分

日本では、「身分が違う」というとお金持ちかそうでないかというぐらいの感覚ですが、本当の「身分が違う」とは、こういうことなのかと改めて知らされます。

同じ人間であるはずなのに、身分が違うと名前さえ呼ぶことができない。それぞれの世界の中で暮らし、上に上がることも下に下がることも無い。

ましてや恋人同士になったり、結婚することなど論外なのだ。これが身分というものなのです。

御曹司とメイド

大会社の御曹司であるアシュビンを旦那様(Sir)と呼ぶラトゥナは、若くして未亡人になった身分の低い女性。彼女の村では、一度未亡人になったら、一生未亡人のままで暮らさなくてはなりません。

そんなラトゥナはいつも綺麗な色のサリーをまとっています。家事の邪魔だろうと思わないでもないですが、そのサリーを身にまとった彼女の横顔から背中が実に美しい。

そのうえ心優しく、ラトゥナと一つ屋根に暮らす旦那様のアシュビンのことを細やかに気遣います。

アシュビンがいつしか彼女に惹かれるのも無理はなく、アシュビンも優しくハンサムなので、ラトゥナも恋心を抱きます。

そうして2人の気持ちがだんだん近づいていく描写は、この先がどうなるのかという悲観的な気持ちとともに、自然にラトゥナのほうに感情移入していくようになっており、ここは上手いなと思いました。

インドでは未公開

しかしこの映画、実はインドでは公開されていないのです。

日本では有り得る、玉の輿や身分違いの恋などという簡単なものではなかった。身分を超えた恋愛をテーマにすること自体、インドではタブーなことなのです。

名前を呼ぶことができたのか

さてラトゥナは、アシュビンの名前を呼ぶことができたのでしょうか。

たとえそれができたとしても、どうしようもない身分という高い壁。それを超えることができたのでしょうか・・。

ただし、かなえられない愛であればあるほど、それはとても美しいかもしれない。それこそラブストーリーの醍醐味かもしれません。