2023年 クリストファー・ノーラン監督が人類にとっての最悪な発明と言える原子爆弾の開発者「オッペンハイマー」の物語を描きました。日本人にとっては心にちくっと刺さります。
あらすじ
第2次世界大戦中、才能にあふれた物理学者のロバート・オッペンハイマー(キリアン・マーフィー)は、核開発を急ぐ米政府のマンハッタン計画において、原爆開発プロジェクトの委員長に任命される。
しかし、実験で原爆の威力を目の当たりにし、さらにはそれが実戦で投下され、恐るべき大量破壊兵器を生み出したことに衝撃を受けたオッペンハイマーは、戦後、さらなる威力をもった水素爆弾の開発に反対するようになるが……。映画com.
感想
世界で唯一の被爆国である日本での公開は、終戦記念日のある8月を避け、翌年の3月に延期されました。それは日本人の心情をおもんばかってのことでしたが、そこまでする必要があったのかという意見もありました。
しかし私は日本に生まれ育った人間として、原爆投下に関連したシーンではとても悲しい気持ちになりました。
オッペンハイマーの気持ちはよく伝わりましたので、彼に対してというより、アメリカ人全体が大喜びする様子に悲しみと恐ろしさを感じたのです。
しかしながら作品は本当に素晴らしかった。ノーラン監督が得意な「アクティブ」な主人公は封印し、客観的な場面のモノクロと交互に回想シーンも交えて展開する会話劇は、新しいノンストップムービーとも言えるような、その盛り上がりに頭がパンクしそうになるほどでした。
主人公のオッペンハイマーを演じたのはキリアン・マーフィー。ヨーロッパ発の映画でよく見かけていました。一度見たら忘れない個性の持ち主。今回は神経質な物理学者になりきっていました。オッペンハイマーの成功は、彼の演技なしではありえなかったとさえ思います。本物のオッペンハイマーがあのように善人だったかは謎ですし。
「ダークナイト」でもクローズアップされていた善と悪が、「ダンケルク」やこの「オッペンハイマー」でも根底に流れています。時勢に乗っていればそれは善、反対のことをしていたらそれは悪。それを決めるのは時勢に流される大衆である・・
この映画が原爆を扱っていなければ、また私が日本人でなければ、もっとたいらな目で見ることができたのに、と残念に思います。