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『僕らの世界が交わるまで』映画のあらすじ&感想/ジェシー・アイゼンバーグ初監督作品だがあと一歩かなという印象

2022年製作 ジェシー・アイゼンバーグ監督が母と息子のすれ違う心を描いた。ジュリアン・ムーアのうまさに救われているが、あと一歩何かが足りない。この一歩は限りなく大きい。

あらすじ

DV被害に遭った人々のためのシェルターを運営する母エブリン(ジュリアン・ムーア)と、ネットのライブ配信で人気を集める高校生の息子ジギー(フィン・ウォルフハード)。

社会奉仕に身を捧げる母と自分のフォロワーのことで頭がいっぱいのZ世代の息子は、お互いのことを分かり合えず、すれ違ってばかり。

そんな2人だったが、各々がないものねだりの相手にひかれて空回りするという、親子でそっくりなところもあり、そのことからそれぞれが少しずつ変化していく。映画com.

感想

予告編などの宣伝文句は仰々しい。「親子間のギャップと理想と現実・・」

実際にはストーリーに目新しい部分はほぼ無く、家族間の微妙な心のすれ違いが観客に「ああ自分にも覚えがある」と思わせる展開でうまく引き込ませてるなというだけでした。

それはジュリアン・ムーアの巧みな演技と、耳新しい音楽のせいでしょう。エミール・モッセリ、「ミナリ」の音楽も担当していました。

しかし、肝心かなめの、親子のすれ違いがどうなっていくかの、物語の核心部分が、せっかくさんざん揺れ動き傷ついた果てに、彼らの心はどこに行きつくのか、それは限りなくふわっとした決着を迎えました。

登場人物の精神設定がおそろしく薄っぺらい。それは家族映画という身近なテーマにありがちですが、それをもっと深遠なところまでエグりきってほしかった。

なぜならそんなエグりきりそうな雰囲気が、登場シーンや随所にあったからだ。期待させるものが大いにあったのだ。たとえばジギーの歌う歌が下手くそなところも良かった。なぜ下手なのにフォロワーがいるのか。それすら監督はわかっていなかったのではないか。

そういうわけで、非常に惜しい出来上がりとなった初監督作品。次回作に期待していいのでしょうか。

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