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『ピアノ・レッスン』映画のあらすじ&感想:マイケル・ナイマンの心に鮮烈に残る名曲にのせて、俳優たちは最高の演技を見せました

1993年 ジェーン・カンピオン監督。カンヌ映画祭でのパルムドール受賞は、女性監督で初。そしてニュージーランド出身の監督として初めてでした。ホリー・ハンターがアカデミー主演女優賞、アナ・パキンが助演女優賞に輝いています。

あらすじ

19世紀半ば。エイダ(ホリー・ハンター)はニュージーランド入植者のスチュアート(サム・ニール)に嫁ぐため、娘フローラと1台のピアノとともにスコットランドからやって来る。

口のきけない彼女にとって自分の感情を表現できるピアノは大切なものだったが、スチュアートは重いピアノを浜辺に置き去りにし、粗野な地主ベインズの土地と交換してしまう。

エイダに興味を抱いたベインズ(ハーベイ・カイテル)は、自分に演奏を教えるならピアノを返すと彼女に提案。仕方なく受け入れるエイダだったが、レッスンを重ねるうちにベインズに惹かれていく。映画com.

感想

ホリー・ハンターは「6歳で話すことをやめた」女性を演じています。まったくセリフがないのですが、その存在感、表現力は素晴らしいものでした。

人間は話をする必要などないのではないか、と思わせるような迫力ある目力と、これまた力強い手話。手話がこんなに雄弁だということをこの映画で知りました。

また、最初は嫌っていた男に、だんだん惹かれていく表情の演技の細やかさはまるで職人芸です。

ハーベイ・カイテルもキャリア最高のモテ男の役かと思われる素敵な人物をまっすぐに演じていました。

映画が公開された当時は、女性が奥ゆかしくあることを強制されていた時代に「欲望のままに生きた」ということがクローズアップされていたのをおぼえています。

誰を誰が好きになるかは自由、ということを、女性監督が描いたことが大きな話題となったこの作品。

時が流れ、これからは本当の意味での「誰が誰を好きになるかは自由」が実現していく時代になっていくのでしょう。ジェーン・カンピオンは「パワー・オブ・ザ・ドッグ」でさらにメッセージを投げかけています。

今、自分は自由な意思で生きているか、と改めて思い直すときがきています。