2013年 石井裕也監督。三浦しおんの本屋大賞受賞作の映画化。辞書の編纂に関わった人たちの約13年間を描いています。辞書は言葉の海を渡る舟（ふね）とは、素敵な言葉です。
あらすじ
1995年 辞書監修者の松本教授（加藤剛）は新しい辞書「大渡海」の編纂に並々ならぬ意欲を燃やしていた。しかし信頼する編集者荒木（小林薫）はもうすぐ定年となるため、後任の編集者を探すことになる。
そんなとき、少し変わり者だが言葉の表現のセンスは抜きんでている馬締（ﾏｼﾞﾒ・松田龍平）に出会った荒木は、早速辞書編集部に異動させる。こうして馬締は編集部の西岡（オダギリジョー）らとともに「大渡海」を作り上げていくことになった。
松本教授は新しい言葉、誤用されている言葉も加えた辞書を目指す。「辞書は言葉の海を渡る舟」馬締たち編集者はその舟を編んでいく作業をコツコツと続けるのだった。
そんなとき、馬締は下宿先に越してきた美しい女性に恋をする。香具矢というその女性は料理人を目指していた。馬締が恋をしていることを知った編集部の仲間は、みんなでその店に行こうということになる・・。
感想
辞書の編纂がこんなにも大変なことなんだ、と改めて知ることになりました。辞書はいつも身近にあり慣れ親しんだ書物ですが、その文章の一つ一つが、誰かによってこんなに丁寧に練られたものだとは思いが至りませんでした。
映画の中で描かれる編集者の馬締は、香具矢に告白するときも草書体で書かれた恋文を渡すなど、日本語を心から愛していることが伺えます。そうかといって決して変人ではない好人物に松田龍平が上手く演じています。
宮崎あおいが存在感抜群なのは言うまでもないですが、少し抑えた感じで松田龍平の静かな雰囲気を壊さないようにしています。
松田龍平という役者さんは、内に秘めた想いや闘志を表現するのが得意です。この作品でも内なる炎が見えました。
静かに淡々と流れていく映画の中の時の流れ、さざ波のようなクライマックスに、終わってみると心が癒されていました。
言葉の海を渡る舟、うまく表現したなあと思います。
