1971年 ルキノ・ヴィスコンティ監督。グスタフ・マーラーの曲に合わせて展開する映像世界に心癒されたい。一度は観ておきたかった映画です。
あらすじ
静養のため、1人でベニスを訪れた老作曲家のグスタフ(ダーク・ボガード)は、滞在先のホテルで美しい少年タージオ(ビョルン・アンドレセン)に出会う。
完璧な美しさのタージオに魅せられたグスタフは、海辺やホテルで彼の姿を追うようになるが、話しかけることはできない。
そんな時ベニスに疫病が流行していることを知り、グスタフは一度ベニスを離れようとするが、手違いで荷物が別の場所に送られたことを知ると、
憤慨しながらも、うれしそうにベニスに戻ってきた。
グスタフはタージオの姿を追いかける。タージオも視線を感じて見つめ返すが、ふたりが言葉を交わすことは無かった・・。
感想
難解な映画だとされていますが、この美しい映画はそんなに深く考えずに鑑賞してもいいのでは、と思っています。
冒頭の、グスタフが乗る船が海を疾走するシーンからとてもステキです。ベニスの海辺のシーンにしても、当時の貴族たちの風にはためく衣装にしても、その臨場感を楽しみながら、眺めるように観るのがこの映画に合っていると思えてなりません。
そして何と言ってもマーラーの交響曲第5番・第4楽章「アダージェット」は素晴らしい。この作品の真の主人公は音楽ではないかと思うくらいです。
マーラーがモデルの主人公グスタフは題名のとおりベニスで死ぬことになりますが、なぜベニスを去らなかったのか、タージオとは恋人同士でもないのになぜそこまで固執するのか、そこの深い理由を突き詰めていくと「難解な作品」となってしまう気がします。
ですが私はそういう見方はしなくていいように思います。もっと自由な眼でのびのびと鑑賞することで、映画の本当の魅力、存在価値が浮かび上がってくるのではないでしょうか。
マーラーの曲とベニスの風景、グスタフの孤独、貴族たちの衣装、そして美少年タージオ。
たとえばこれらを一幅の絵ととらえて曲が終わるまで鑑賞するという見方も、実に贅沢で心地よいものに思えます。