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『桐島、部活やめるってよ』映画のあらすじ&感想/高校が舞台の群像劇

2012年公開 吉田大八監督 神木隆之介主演。朝井リョウのデビュー作の映画化です。国内の映画賞を数々受賞しました。その後の映画界で活躍する俳優さんたちがたくさん出ています。

松岡茉優が抜群に良い。その後これを超える演技をしていないですが。

あらすじ

男子バレー部の花形選手の桐島が部活をやめるらしい、という噂が流れ、それを知らなかった恋人の梨沙(山本美月)や親友の宏樹(東出昌大)たちに動揺が走る。

同じクラスの梨沙の仲間の沙奈(松岡茉優)、かすみ(橋本愛)たちも心配している。

やはり同じクラスの涼也(神木隆之介)は運動部のことには無関心で、マイナーな文化部の映画部に所属している。運動部の生徒や、宏樹のような運動神経抜群のかっこいい男子に対してコンプレックスを抱いていた。

一方、宏樹は何に対しても情熱を燃やすことができず、それでも何事もそれなりにうまくこなせるような人物だった。ただそんな日々がなんとなく空虚に思えていた・・。

感想

原作では時間を追って展開するストーリーのようですが、映画では同じ場面を別の目線で見て何度も繰り返す手法で描かれています。

桐島という高校2年生が部活をやめる、というただそれだけのことなのですが、このことを取り巻くさまざまな人々の思惑、想い、戸惑い、怒り、それをまんべんなく伝えるための手法が、究極のこれだと思いました。

同じシーンを別の角度から何度もたんたんと繰り返す。違う方向から取られたキャストの同じセリフからまた別の思いが溢れてくる。

高校生たちの瑞々しい感情をわかりやすく私たちに伝えることに、この映画は成功しています、「私も似たようなことがあったな」と誰もが思うでしょう。きっと自分もこんな日々を過ごしていたはずだと。そして出演者の誰かに自分を投影していくのです。

高校が舞台で、若いキャストばかりの映画なので、青春胸キュン物かしら、と勘違いしそうですが、まったく違います。

こんなに長く生きていると、いい映画って最初の数分でわかるようになりました。この映画は、だいたい1分ぐらいでわかりました。