あのとき見逃した映画は名作だったかもしれない
新旧の映画の中から
名作を掘り起こすレビューサイト
ヒューマンドラマ

『ブルーバレンタイン』映画のあらすじ&感想/リアルに描く夫婦の物語

2010年公開。全編被写体に寄り気味で撮られた作品。とてもリアルに夫婦の感情のもつれを描いています。セリフだけでなく部屋の散らかり具合までもリアル。

あらすじ

幼い一人娘のフランキーが、外で飼い犬の名前を呼んでいる。

朝からほろ酔いの夫のディーン(ライアン・コズリング)はくたびれた格好でタバコを加え、フランキーにやさしく「ママを起こそう」と言う。

正看護師としてバリバリに働くシンディー(ミシェル・ウイリアムズ)は早朝に起こされ不機嫌なまま、固いオートミールをテーブルに出す。

かつては深く愛し合い結婚した二人だった。ディーンの一目ぼれから付き合いが始まり、医学生のシンディーとは不釣り合いではあったが、前の彼氏の子供を妊娠してしまったシンディーに、ディーンは「家族になろう」と言った。

愛していたはずだったが、2人の人生観は別の方向を向いていた。子育てしながら資格を取り、仕事で認められるように毎日頑張っているシンディーと、朝から酒を飲み、遅い時間から塗装の仕事をして家ではやさしい父親であるディーン。

ディーンは夫婦の関係を修復したいと思い、シンディーに1泊だけホテルで過ごそうと誘う・・。

感想

きわどいシーンがあることで当初はR17指定となったそうです。しかしそのシーンは、すでに愛が冷めたシンディーの乾いた表情を映し出すための効果的なシーンでした。

思い切り引いた目で見ると、人間は滑稽だなという感想に。しかし自分に当てはめて考えると、人間というのは哀しいものだなと思ってしまいます。

人はみなそれぞれの思いがあり、その方向性は一人1人違う。愛という接着剤では修復できないほどに離れてしまうことも、たびたびあります。

とても同じ人とは思えないほど体重を何キロも増減して、2人の俳優さんが挑んだ映画「ブルーバレンタイン」。意味するものは、愛する人との別れ。

「こんな人になっちゃったら、誰でも覚めるわ」と思いつつ、いや、他人ごとではない・・と身震いがします。

もう一つのとらえ方として、非常に興味深かったのは、ディーンとシンディーの両親のこと。

シンディーの父親は厳格で切れやすい性格。母親は料理が上手ではない。またディーンの母親は男を作って逃げた人で、父親は愛想をつかされるような人だった。

この描写によって、ディーンとシンディーの人間性がよりわかりやすくなります。

シンディーのオートミールが不味いことや性格が怒りっぽいこと、唯一大好きだったおばあちゃんのようにはなれず、気がつけば両親のように仏頂面ばかりしていること。そしてディーンもだんだんだらしなくなっていること。おそらく父親もそうだったのだろう。

主人公たちのキャラクターが鮮やかに浮かび上がり、感情移入が最高潮を迎えたころ、クライマックスで2人は最後の結論を出します。泥沼のような口論の果てに。

そしてラストシーンの背景には道端で子供が打ち上げる花火が。そのあとのエンドロールへと繋がり、花火の中に2人の仲睦まじい時の画像が浮き上がります。それは花火のように輝いては消えます。

愛なんて花火のようなもの、ということですね。


人気ブログランキング