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パリに見出されたピアニスト/あらすじ&感想

原題:au bout des doigts(あなたの指先で) 映画館の暗い空間の中に響き渡るピアノの美しい曲、画面に美しい青年。内容はさておき、それはとても贅沢な時間でした。

あらすじ

パリ北駅に置かれた、だれでも自由に弾けるピアノ。マチューは時々そのピアノにふらっと座り、クラシックの曲を弾いていた。

あるときそんなマチューの姿に見入る男性がいた。パリ国立高等音楽院でディレクターを務めるピエールだった。ピエールはマチューに声をかけ、名刺を渡す。

「君のバッハの解釈はとても斬新だ。いったい誰に師事してしたのですか。もし良かったら音楽院に入り、ピアニストを目指さないか」しかしマチューは全く取り合わず去って行く。

そんなマチューは町の悪い仲間たちと空巣狙いを繰り返していた。離婚後、母親に育てられたマチュー達兄弟だったが、生活は貧しく、ピアニストを志す人々とは全く違う世界に住んでいた。

ある夜、仲間と盗みに入った豪華な家で、素晴らしいピアノが置かれているのを目にする。マチューはピアノを弾きたいという気持ちを抑えることができなかった。そして弾くことに酔いしれ、警察が到着したこともマチューは気付かなかった。

逮捕されたマチューはポケットの中に入っていた名刺を取り出す。ピエールに身元引受人を頼むことを思い付いたのだ。このことがマチューの運命を大きく変えることになる・・。




感想

この映画のテーマは、「格差の壁を飛び越えること」です。

マチューは物語の後半で仲間に「お前は違う世界の住人になった」と言われます。これは祝福の言葉です。

現代の世であっても、どこの国でも格差はあり、そこから抜け出すことは容易ではありません。お金持ちの子供に生まれなければお金持ちには簡単にはなれないのです。

だがしかし、マチューは自分の指だけで、貧しい世界から抜け出した。何も他にはない、指だけで成功者になりました。

このことがこの映画のテーマであり、作り手が描きたかったのは、秀でたものを持っているならば人は壁を越えられる、ということです。突然現れた救いの神のようなピエールは駅のピアノを弾く貧しい青年を天才と見抜き、ピアニストにさせようとします。

そんな都合のいい展開になるはずがない、というレビューばかりが映画サイトには寄せられていますが、なぜ観客はそれほどまでに共感できないのでしょうか。

それはおそらく、マチューが天才に見えないからではないでしょうか。この映画が成功するかどうかのカギはそこにあったのです。観客にとって魅力的なキャラクターならば、どんなことがあっても成功してほしい、と肩入れすることでしょう。

しかし、マチューという人物の設定が曖昧すぎて「この人は天才だ」と思わせるものがあまり感じられません。このため映画全体が嘘っぽいものになってしまいました。

いかに映画は「主役」が作るものか、ということです。他の総てが素晴らしかったけれど、マチューという人物の掘り下げ方が足りなくて、観ている人に「ストーリーに無理がある」とまで思わせてしまいました。

実に勿体ない作品であります。フランス語の響きも、ラフマニロフのピアノ協奏曲もすべて素晴らしかったのに。

個人的には、こういう雰囲気の映画は大好きですけれど。

それと邦題がいただけないです。「**のピアニスト」って付ければいいというものではないですね。


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