ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロの小説を2010年に映画化。SF小説と呼ばれることもあるようですが、それは違うような気がします。
あらすじ
別の世界の1952年、不治の病とされていた病気の治療が可能になる。
1978年、キャシーは介護人として手術を受ける男性を見つめている。これまでの日々を思い起こし、心の中は空しい想いでいっぱいだった。
キャシー、ルース、トミーは寄宿学校ヘールシャムで育った。外の世界とは完全に閉ざされ、厳しい規律の中、頻繁な健康診断や、外で買い物をする練習などが行われる。
あるとき、ルーシー先生が生徒たちに本当のことを話してしまう。それは、この寄宿学校の目的が、「臓器提供」のためにあるということ。
そして生徒たちはみな、そのため中年になることなくこの世を去ることになる、だから意味のある「生」を過ごしてほしい、と。
キャシー(キャリー・マリガン)とトミー(アンドリュー・ガーフィールド)はお互いに想い合っていたが、勝気なルース(キーラ・ナイトレイ)が強引にトミーに近づき、2人は付き合うことになる。
やがて18歳になり3人は寄宿舎を出て、コテージと呼ばれるところに移るが、キャシーは孤立していた。
感想
原作を読んだわけではありませんが、あらすじを読むと、映画版はずいぶん省略されているようです。
しかし繊細なお話ですので、省略しすぎては伝わらない部分もあったのではないでしょうか。実際、映画は少々間延びしていました。
3人の演技が素晴らしかっただけに、それはすごく惜しいと思っています。
それにしても、キャリー・マリガンはいい女優さんです。悲しみをたたえた、また色々な思いを抱いて佇んでいるときの表情は可愛いだけでなく、映画の主題を代弁していて、本当に素晴らしい。
ヘルシャムの建物や、周りの情景、脇役の方たちの演技もすべていいのですが、もう少しサスペンスタッチなところを入れたり、メリハリのある演出にしたほうが良かったのでは。
けれど、見終わった後に、心の中に何か重いものが残ったことは確かです。創作の話ではありますが、なんて残酷なことなのでしょう。
こんなことを考え付くとしたら、人間ぐらいだ、とカズオ・イシグロさんは言いたかったのではないでしょうか。