あのとき見逃した映画は名作だったかもしれない
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『新聞記者』映画のあらすじ&感想/こういう映画を作るべき、そして観るべき。

政治とか新聞とかって難しい話だから・・と敬遠されがちなテーマ。だけどこの映画で表現されているのは人間としてどう生きるのかという問いかけ。【 映画パンフレット 】 新聞記者

松坂桃李とシム・ウンギョンが向き合う「大きな」ものに私たちも向き合えるだろうか。とうてい無理だな。「大きな」ものは怖いから。

シム・ウンギョンの演技はほんとうに引き込まれます。うまいです。セリフは片言なのに、そんなことは関係なく伝わるものなのだと知らされました。

それから松坂桃李の上司を演じた、田中哲司さん、熱演でした。

あらすじ

東都新聞の若い女性記者吉岡エリカ(シム・ウンギョン)はジャーナリストの父を誤報による自殺で亡くしていた。エリカは官邸への辛辣な質問で異端視されるほど、人一倍正義感が強かった。

あるとき東都新聞に匿名でFAXが送られる。それは大学新設計画の文書だった。

そのころ内閣情報調査室の杉原(松坂桃李)は、ある政治家の不祥事のことで、被害者を中傷する情報をSNSに流し、世論を操作する任務についていた。謎の多いその部署では、室長の多田の指示で、さまざまな情報コントロールが行われていた。

その後FAXの送り主と思われる人物が、ビルから転落自殺する。それは杉原の元上司の神崎だった。神崎の死に疑問を持った杉原は、神崎の葬儀で記者の吉岡エリカと知り合い、神崎の死の真相に迫っていく・・。

感想

力作です。最後の最後まで、主人公の二人の演技が凄いです。ストーリーはそれほど複雑ではなく、ありがちと言っては語弊がありますが、奇想天外な仕掛けがあるわけではありません。

しかしこの人間ドラマは、人間が何のためにどのように生きるのかを問いかけるものになっていて、官邸などに行くことも無い一般の私たちでさえも、こんなとき私なら・・と選択を考えてしまいます。

たぶん私は保身にまわるだろうな。しかも「へへっ」ていう顔でふつうに自分を守るだろうな。
しかしこの映画の中の二人は、私たちの良心の象徴かもしれません。心の中で、がんばれくじけるなと叫びながら、ラストシーンを見入っている自分がいました。

地味な作品ながら、観客動員数をだんだん伸ばしていったそうです。たしかに劇場は混み合っていました。作り手の熱意はちゃんと伝わるのですね。