あのとき見逃した映画は名作だったかもしれない
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『ブロークバック・マウンテン』映画のあらすじ&感想

一生に一度の大切な人に出会うことができたのに、それはとてつもなく切ないことだった。出会わなければよかったかもしれないほどに。
ブロークバック・マウンテン (字幕版)

2005年 アン・リー監督。アカデミー監督賞などを受賞しましたが、作品賞は逃しました。男性同士の恋愛を扱った作品だから、とアン・リー監督は保守的なアカデミーを批判したそうですが、作品賞の「クラッシュ」も素晴らしいですので、それだけが理由とは思えません。

あらすじ

1963年アメリカ中西部のブロークバック・マウンテンで羊の放牧を行う季節労働者として、イニスとジャックは出会った。

最初はぎくしゃくしていたが、ひと夏を過ごすうちに2人にはかけがえの無い友情が芽生えた。そしてあるとき2人は一線を越えてしまう。

だがこの時代には同性愛者は社会的に認められた存在ではなく、放牧の仕事が終わると、それぞれの町へ帰って行った。別れ際に次の約束をしないまま、そして心のすれ違いから殴り合ってしまいその傷を残したまま・・。

それぞれは結婚し、子供もできた。あるときジャックからイニスに手紙が届く。2人の心は少しも離れていなかった。かけがいのない大切な存在だったのだ・・。

感想

イニスを演じたヒース・レジャーの演技は絶賛されました。20歳から40歳までの20年間を、少しのメイクと話し方で演じ分けた。内気だけれど心に深くしまわれた想いを実にうまく表現しています。

そしてジャックを演じたジェイク・ギレンホール。青年のジェイクは美しく、確かに愛してしまいそうだ・・と思わせる。深い瞳の演技も素晴らしいものでした。

同性愛、という一言では括れない、人間として彼らは深く愛し合っていました。しかし、ブロークバック・マウンテンの自然の中で過ごす、年に2~3度の時間のなかでしか許されないことでした。

イニスは特に厳しい父親に育てられ、生まれ育った町を出たことが無いため、どこか遠いところに行く、ということもできなかった。しかし心にはずっと迷いがあり、家族を大切にしていても、どこか違うところを見ていました。

そんなイニスをそのものだったヒース・レジャー。この映画のあと、「ダークナイト」でジョーカーを演じ、アカデミー助演男優賞を受賞しました。

このあとどんな素晴らしい大俳優になっていくかと思われていたのに、睡眠薬とほかの薬を併用したことによる中毒で、28歳の若さで亡くなりました。「ダークナイト」の公開はそのあとです。

ヒース・レジャーがこの役を演じてくれたこと、私がこの映画に出会えたことを感謝します。人生にはいくつか、そういう出会いがありますが、映画との出会いも、人生を変えることがあります。