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『焼肉ドラゴン』映画のあらすじ&感想

2018年 数々の戯曲、映画の脚本を世に出してきた鄭義信の初監督作品。同名の舞台作品が2008年と2011年に日韓で上演され、たくさんの賞を受賞しました。

あらすじ

時代は1970年代。大阪国際空港近くの在日朝鮮人の人たちが住んでいる地区に「焼肉ドラゴン」がある。

店の主人の龍吉は第二次大戦で左腕を失いながらも、妻とともに懸命に働き、4人の子供たちを育ててきた。

子供たちの恋愛、結婚、学校でのいじめ、市役所からの立ち退き命令など、様々な問題に直面する。明るく力強い家族とともに生きてきたが、やがて家族は離れ離れになっていく・・。

ネタバレ感想

演劇については全く詳しくなく、映画化されて初めて知りました。力強い題名から、そういうストーリーを想像していましたが、思った通り、たいへん力強い作品でした。

俳優さんたちの熱演がすごい。お父さんの龍吉役の韓国人俳優のキム・サンホの上手いこと。次女の井上真央もこれまでの殻を破る完ぺきな演技でした。

祖国から離れ、日本で働き、子供を育ててきた龍吉のセリフはすべてが重く感じます。そんな両親を見て育った姉妹と弟。それぞれの不器用な愛とうまくいかない日常を、それぞれエキセントリックに演じています。どこか舞台を見ているかのようでもありました。

最後は離れ離れになってしまう運命でしたが、それでもどこにいても家族だ、とお父さんが言います。北朝鮮へ旅立ち二度と会えなくなる長女夫婦、韓国へ行く次女夫婦たちと最後の別れのシーン。

みんなで家族写真を撮り、振り返ると桜の花びらがどこからともなく舞ってくるのでした。