岩井俊二監督が、黒木華をイメージして書き下ろした作品です。確かに全編黒木華のPVみたい。
リップヴァンウィンクルとは、1820年のアメリカの短編小説の主人公で、浦島太郎みたいな話のようです。時代遅れの人、眠ってばかりの人、という慣用句にもなっているそうです。
あらすじ
七海は派遣教師だったが、ある時ネットで知り合った男性と結婚することになる。しかしその結婚は一瞬で破綻し、七海はアルバイトをしてなんとなく生きている。
そんなとき結婚式のニセ家族をなんでも屋の安室からの斡旋で引き受けた七海は、女優をやっているという真白と意気投合する。七海はそのあと安室から大豪邸の掃除を100万円で頼まれるが、そこには真白がいた。
真白の本業はAV嬢。いつも寝てばかりの真白だったが、明るい性格で正反対の七海とはなぜか気が合うのだった。
感想
不思議な話、と一口に言ってしまうと、価値のない話のように聞こえますが、そうではありません。黒木華のかわいらしさと透明感を十分に引き出した映像ですが、話の根本はとても重いものでした。生きていくことって何だろう、と問いかけます。
ネタバレはしませんが、この話は、生と死を問いかけていますので、ぼんやりと見てはいけません。いつしか引き込まれていることに気づくでしょう。それだけ黒木華がうまいということもあります。
真白役のCOCCOさんは、適役ですが、適役過ぎて本人そのものとしか見えないです。
安室ゆきます、というふざけた役名の綾野剛は、彼のカメレオン俳優である悪か善かわからない雰囲気をたっぷり楽しめます。ただ私はもう少し台本に踏み込んで、どこかに彼自身を滲み出してほしかった。
綾野剛は何でもできる俳優さんですが、どんな役をやっても綾野剛自身が見えてこない。何をやっても人間味がないのは、つまらなさにつながります。
さて、映画はこうなるだろうな、というエンディングを迎えます。そして、なんだやっぱりこうなるのか、まあよかったな。と思って終わります。ラストの引きの絵の、黒木華のほほえみでなんか救われた気持ちになります。