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『世界から猫が消えたなら』映画のあらすじ&感想

2016年 「君の名は。」の映画プロデューサー川村元気が初執筆した小説の映画化。世界から猫が消えたなら

あらすじ

猫と2人で暮らす「僕」 体調を崩し病院に運ばれたが、脳腫瘍で手遅れと言われる。

思ったより取り乱さないものだと思っているとなぜか自分そっくりの悪魔が現れ、世界から何かを消すと、命が一日長らえると言う。

半信半疑のまま「電話」を消すことに。しかし「電話」は別れた恋人と最初に出合うきっかけになったものだった。

悪魔の力で電話が消え、彼女との出会いも無かったことになってしまった。その代わり僕は、一日長く生きていられた。こころは空虚になったが。

その次に悪魔は「映画」を消そうと言う。映画は彼女が大好きで、大学を卒業して映画館に努めているほど。また、映画オタクの親友もいる。

僕は親友に「明日死ぬとしたら、最後に見る映画は何だろう」と問いかける。親友は必死になって勤め先のレンタル店の、店中をひっくり返して探そうとする。
そして最後に泣きながら、「とにかく生きていてほしい」と言うのだった。

悪魔はさらに「猫」を消してしまおうと言う。猫のキャベツは、癌で亡くなった母が可愛がっていた猫。それを消すということは、母との思い出、家族との思い出もすべて消えてしまう、ということだった・・。

感想

巷の評判はとにかく良くない。つじつまが合わない、とか支離滅裂とか言われています。でもそもそも原作がそうなんだから、しかたないのでは。

悪魔が何であるか、自分自身の心の声の化身か、それはどうでもよくて、明日死ぬ、というときに自分にとって大事なものが消えてしまうことに主人公は自分の命が無くなることよりも悲しんでる、ということが物語のテーマなのです。

お母さんが亡くなっていなかったら、ブエノスアイレスで友達が亡くなってなかったら、こういう思考にならないかもしれない。

いや、実際にはぜったいに自分の命が大切で、ものすごく取り乱すと思う。でもこれは「映画」で、そこに出てくる主人公は、「悪魔」とは対極をなす、善良で悪意が皆無な人でなくてはならなかった。

だから、家族の思い出、親友の言葉、今も愛してる彼女の好きなもの、が、何よりも大事な人なのです。それが「僕」なのです。未来とともに、過去までも失いたくなかった。そういう天使のような人なのです。

そして、この映画は佐藤健の名演技なしでは成立しなかったと思います。いつのまにこんなに演技派になったのでしょう。

さらに猫のキャベツ。表情やしぐさがとてもかわいい。クリスマスイブに亡くなったうちの猫を思い出しました。

うちのは、すごいデブ猫だったけど。