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『ショコラ』映画のあらすじ&感想/ジュリエット・ビノシュが魅力的

2000年公開。監督:ラッセ・ハルストレム。この方の作品には優しさがあります。印象的な曲にのせて、チョコの香りが漂ってきそうです。

あらすじ

1958年のある日、フランスの田舎の村に北風と一緒に母子がやってきた。2人は古い店舗を借りてチョコレートの店を開いた。

母親のヴィアンヌが作るチョコレートは客の好みに合った味と香りで、食べた人を魅了した。娘のアヌークは架空の生き物に話しかけるような、夢見がちで明るい子どもだった。

チョコレートの魅力に惹かれて、夫の暴力に疲れた女性や、孫になかなか会えない家主の女性が店を訪れた。しかし市長であるレノ伯爵は、ミサにも訪れない私生児のいるヴィアンヌのことを受け入れられず、目の敵にするようになる。

そんなときジプシーの船が村に流れ着き逗留する。ギターを弾く青年ルー(ジョニー・デップ)とヴィアンヌは心を通わせるのだった。

感想

厳格なキリスト教徒の村では四旬節の断食月というのがあるそうで、ちょうどその時期にチョコのお店を開いてしまったヴィアンヌはレノ伯爵から疎まれる存在になってしまいます。

そんなチョコのお店のインテリアがほんとうに素敵です。口の悪いお客が「イタリアの売春宿みたいだ」と言うシーンがありますが、つまりそのくらい色の使い方が綺麗で、居心地が良さそうなのです。

さらにチョコの味の説明が「ピリッと香辛料をきかせた・・」というように、香りが漂ってきそうでとてもうまいです。

ジュリエット・ビノシュは何を考えているかわからないところがありますが、それが放浪人のヴィアンヌそのものとも言えます。女らしい色気もある彼女を、敬虔なキリスト教徒で真面目なレノ伯爵が受け入れられないのは当然です。

しかしどちらも正しいと言える気がします。この2人の対比はこの映画が宗教批判をしているような印象を受けますが、でも私はこの映画を「おとぎ話」として捉えたいです。チョコという魔物のようにおいしい食べ物が巻き起こすおとぎ話だと。

ビノシュの演技は「ダメージ(1992年)」の時と変わらず、あまり抑揚の無い感じで終わってしまいますが、娘のアヌークとルーがヴィアンヌの心を代弁するような存在となります。

デップは今は大スターなので、そのことが邪魔になって、ただのハンサムな青年として見れないのが逆に残念でした。

もう少し「北風と一緒に旅をしてきた」ことの描写があってもいいかなと思いますが、それでもこの作品は私の好きな作品の一つになりました。

そして、忘れてはならないのは音楽のすばらしさ。「この曲はショコラの曲だったのか」という聞いたことのある曲もあり、いい映画といい音楽はセットなのだと改めて知りました。