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『ジョジョ・ラビット』映画のあらすじ&感想/笑いと感動

2020年公開。タイカ・ワイティティ監督。コメディですが、反戦という太い芯の通った感動作品。ジョジョ役のローマンくんの純朴な雰囲気と可愛らしさが映画の魅力をぐっと増しています。

あらすじ

1944年のドイツで暮らす10歳の少年ジョジョ(ローマン・グリフィン・デービス)。青年団の訓練でウサギを殺すことができず、「ジョジョラビット」とあだ名をつけられてしまった。

空想の友達のヒトラー(タイカ・ワイティティ)に励まされ、手榴弾を投げる訓練に参加するが、失敗して怪我を負ってしまう。母親(スカーレット・ヨハンソン)は青年団のキャプテン(サム・ロックウェル)に怒鳴りこんだ。

そうしている間にも戦局は厳しくなっていく。そして街角には反ナチでつかまり処刑された人が街角に吊るされていた。

ヒトラーに憧れ、ユダヤ人のことを魔物のように思っていたジョジョだったが、あるとき自宅の屋根裏にユダヤ人の少女エルサ(トーマシン・マッケンジー)が匿われていることに気付き仰天する。実はジョジョの母親は反ナチの運動員だった。

ジョジョは恐ろしいユダヤ人に対して初めは頑なな態度をとる。しかし美しい少女エルサと会話するうち、ジョジョの中で何かが変わっていくのだった。

感想

ニュージーランド人ですがユダヤ人の血を引くワイティティ監督。人々を魅了したというヒトラーの演説を大げさに再現し、揶揄しています。

時代背景はドイツが敗戦色濃くなった頃なのですが、子供たちがまだナチスの勝利を信じているということや、そしてユダヤ人のことは学校の授業で恐ろしい生き物のように教えられていることに驚愕。

母親役はブラックウィドウっぽさが残るスカーレット・ヨハンソン。微妙に浮いてますが、ジョジョを愛する母親を熱演しています。

それから忘れてはならない、天才俳優サム・ロックウェルの存在感。この映画においては、泥沼の戦争に嫌気がさしているドイツ人の良心の象徴の役割をしています。

降伏する寸前のドイツが舞台なので、ともすれば暗く悲惨なドラマになるところですが、このキャプテンK(サム・ロックウェル)や空想のヒトラーの存在によって笑いが生まれ、観客の気持ちは軽くなりました。この仕掛けによって、辛いドラマの辛さがマイルドになったのです。

それでも戦闘シーンは体に力が入ります。どうかジョジョ死なないで、とずっと祈りながら観てしまいました。

ラストシーンからエンドロールに流れる、デビット・ボウイの「Helden」は「Heroes(ヒーローズ)」のドイツ語版です。

この曲、ここで流れたか、と鳥肌と涙がボーッ。

面白い顔のタイカ・ワイティティ監督に最後まで仕掛けられました。完全に虜になった作品です。