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『コクリコ坂から』映画のあらすじ&感想/この作品、もっと評価されてもいいのに

2011年 宮﨑吾朗監督 コクリコとはフランス語でひなげしのことです。
コクリコ坂から [DVD]

あらすじ

1963年横浜の女子高生・松崎海は海の見える丘に建つコクリコ荘を切り盛りしていた。

海の父は船乗りで、朝鮮戦争の時の機雷で亡くなっていた。毎朝、海は父のために庭に旗を高く掲げるのを日課にしていた。

海の通う高校には、文化部の部室棟「カルチェラタン」があり、個性ある生徒たちがそこに出入りしていた。しかし老朽化のためカルチェラタンの取り壊しを学校が計画しており、生徒たちはそれに反対していた。

あるとき海は、学級新聞で取り壊し反対の論争をしている風間俊と知り合い、反対運動に協力することになる。2人は淡い想いをいだくようになり、海は俊に協力してカルチェラタンの清掃を提案、女子生徒を巻き込んでの大清掃が始まった。

そんなあるとき、海は父とその友人が写っている写真を俊に見せた。するとその時から俊の態度がよそよそしくなる。実は俊も同じ写真を持っており、2人は兄弟だということがわかったというのだ。

「ただの友達でいよう」と俊に告げられた海は、深く落ち込んでしまった・・。

感想

原作は1980年に月刊なかよしに掲載された高橋千鶴の漫画です。原作の佐山哲郎は学生運動家で歌人、その後官能小説家だったり僧侶だったりという方だそうです。

「コクリコ坂から」が映画化されるきっかけとなったのは、宮崎駿が山荘で姪や甥たちと少女漫画を読んでいて、この作品をいつか映画化したいと思ったことに始まります。

原作者が学生運動家だったこともあり、学園紛争の話が盛り込まれていますが、映画ではその部分を大きく引き伸ばしているそうです。

アニメでいつも気になるのは、声優さんのことです。一度気になりだすと、映画が終わるまで支障が残る場合もあります。うまく溶け込んで、主人公の気持ちを表現できているか、について言うと、長澤まさみは合格点。風間俊介もとてもいいです。肝心の俊の声の岡田准一は・・なんとなく違うかな、という感想です。

俊という人物は、物語を引っ張り、面白くするキャラクター。アニメーションそのものが、隅々まで丁寧に、生き生きと作られていただけに、そのあたりが少し残念でした。

海に向かって旗を揚げる、というとてもロマンチックで美しいシーンが作品を象徴しています。コクリコ坂から海が見えるなんて、なんという素敵な場所に建っているのでしょう。

主人公の海が焼く目玉焼きがとっても美味しそうに見える、コクリコ荘の朝の情景はとてもうまいと思いました。また、カルチェラタンの内部の描写も最高に活気あふれてワクワクします。

ストーリーも学園紛争と出生の秘密が折り重なって展開し、最後まで引き込まれた作品です。

この作品、もう少し名作として認知されてもいいのにな、と思っています。