1996年 岩井俊二脚本・監督 架空の日本の街で繰り広げられるアジア移民たちの物語。独特の世界観と名曲「Swallowtail Butterfly」。
あらすじ
日本の円を稼ぎにやってきたアジアの移民たちは街のことを「円都(イェン・タウン)」と呼び、そんな移民たちは「円盗(イェン・タウン)」と呼ばれていた。
円都で娼婦をしているグリコ(CHARA)は、同じ娼婦の母親を亡くしたアゲハ(伊藤歩)を引き取った。
あるときグリコは客のやくざを死なせてしまう。彼の体内から1万円札の磁気テープが入ったカセットテープが見つかり、グリコは偽札を作ってフェイホン(三上博史)とともに大金を手にした。
そしてその金をもとにライブハウスを買い取ったグリコたち。そこで歌うグリコに歌手への道が開ける・・
感想
架空の街でのまったく奇想天外な話、というだけになってしまうところが、アジアからの移民という設定が加わることでどんな酷いことも真実味を帯びるから不思議。
三上博史をはじめとする出演者たちの日本語以外の言語が実にすごい。それもリアリティに繋がっていて、またアジアの力強さもひしひし迫ってくるような、映画自体がとても生き生きとしています。
CHARAの「Swallowtail Butterfly」は郷愁をそそる名曲で大ヒットしました。映画のために作られたYEN TOWN BANDは再結成し活動再開したようです。
岩井俊二らしくなくバイオレンスなシーンも多く出てきますが、伊藤歩演じるアゲハの清廉さが少しだけ血なまぐささを消しています。でもほんとうに少しだけ。映画は異国的で退廃的で血がドバーッという70~80年代風のにおいもします。
この奇天烈なストーリーを受け入れるかどうか。当時は評価が分かれたことでしょう。21世紀の今ならば、また違った見方ができそうです。