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『イエスタデイ』映画のあらすじ&感想/ビートルズを使うならもう少しうまくやって

2019年公開。どことなく70年代の映画を見ている気がしました。テンポも何もかも。古臭いということではないけど、新しくはありませんでした。イエスタデイ (オリジナル・サウンドトラック)

あらすじ

スーパーで店員のアルバイトをしながら、売れないミュージシャンを続けているジャック(ヒメーシュ・パテル)。最大の理解者でマネージャーのエリー(リリー・ジェームズ)はジャックを励ましながらライブの仕事を取ってくるが、ジャックの演奏する曲への客の反応はいつも微妙。

こんな生活に疲れ、もうミュージシャンをあきらめようと決めたその夜。全世界が12秒間だけ停電になり、真っ暗い道路を自転車で走っていたジャックは、路面電車と接触し大けがを負う。目が覚めたジャックの前歯は2本無かった。

しかし実はそれ以来世界は大きく変わっていたことにジャックはすぐには気づかなかった。退院し、友達の前で「今の気持ちだ」とエリーに貰ったギターでイエスタデイを演奏し始めると・・仲間たちは神妙な顔になり聞き入る。「なんてすばらしい曲なんだ。こんな曲を作っていたなんて」と口々に絶賛。

ジャックはからかわれていると思い、怒って帰るが、まさかと思いグーグルでビートルズを検索してみると「虫」とでるばかりだった。「あの停電のあとからだ」

ジャックは記憶に残るビートルズの曲をその後のライブで演奏し始めた。もちろんすぐには反応が無く、自分の問題なのか、と思い始めたとき、「CDを出さないか、自分のスタジオを使っていいから」という人が現れる。

ようやく少しづつ未来が開け始めた。大物ミュージシャンのエド・シーラン(本人)が偶然曲を聴き、自分のツアーに同行しないかと自宅まで訪ねて来た。断る理由はない。しかし教師の仕事があるエリーは一緒にはいけないという。

ずっと長い間支えてくれたエリーだが、ジャックはエリーへの想いを口にできないでいた。エリーはいつも待っているというのに。そんな2人の思いは絡まったまま、ジャックの運命は動き出すのだった・・。

感想

こういう、想いのすれ違いみたいの、70年代だなあと思いながら、だからちょっといらいらしながら見ている自分がいました。ダニー・ボイル監督は「スラムドッグ&ミリオネア」の監督さんですが、あのスピード感みたいなものはもうなくて、なんか楽しんで作ってるな、という感じがしました。

そうなるとショービジネス界の厳しさも優しいものになっちゃうので、作り手としては都合がいいのかもしれない。けどなんか、どことなく消化不良が残ります。もっと徹底的にコメディにすればよかったのに。

エド・シーラン本人が出てたりして、またビートルズの数々の名曲の演奏も(ビートルズファンから見るともちろん足りないでしょうが)私は良かったと思います。でも、12秒間の停電の不思議は「不思議な事」というだけでいいのかな。ジョン・レノンぽいおじいさんの意味は。最後の落としどころは、完全に収まってないのでは。言い出せばたくさん突っ込みどころが止まらない。

ビートルズの曲たちが、時代を超えた名曲だということはそもそもわかっています。で、それの無い世界は、ビートルズのある世界と何もかも同じなのって変じゃない? ビートルズが無かったら生まれなかったミュージシャンもあるし何故かコカ・コーラもハリーポッターも無いけど、それでも一見して同じ世界なの?

人間に潤いが無いとか、ロック歌手に人権が無いとか、酷いことになっている気がしないでもないけど・・。

この映画は、ビートルズの曲を楽しもう、と思う方のための映画でありますが、ただ上手いカラオケを聞いてるのと同じです。しかし映画館ならばいい音響で聴けるので気持ちはよかった。ただしそれ以上は期待せず、ご覧ください。